ダーク・ファンタジー小説

Re: 陽炎 ( No.70 )
日時: 2013/08/17 11:53
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: IWyQKWFG)

 互いにさよならを言って、彼女は手を振って家の中に入り、ドアを閉めた。今外に居るのは、僕一人だ。だが、何故だかまだこの場から離れたくなかった。
 まだ昼頃だろうか。お腹が空いたので、家に帰ろうとしたその時、早紀の家から、ピアノの音が聞こえてきた。
 僕は不意に微笑する。彼女は、本当に元気が出たんだな。あの顔をされると、こちらまで嬉しくなってくる。

 早紀のこの緑色の屋根の家、そういえば美華の家の隣にあった。何かの縁なんだろうか。
 まぁ、そんなこと考えてもしょうがない、さっさと家に帰ろう。


 家の玄関のドアを開けると、一転して現実に引き戻されたようなにおいがした。

 リビングのドアを開けると、「あら、帰ってきたのね。」という美華の声と共に、焼き肉の美味しそうな匂いがした。驚いていると、和也と義我も居て、焼き肉をつついている。

 ....などという事実は一切無く、現実は、リビングに僕一人が立っているだけだった。
 時計を見ても、やはりまだ昼頃だ。これから何をすればいいのだろうかと、少し不安になる。
 僕は、すぐ近くにあるソファーに座って、何をするか考えていた。