ダーク・ファンタジー小説

Re: 陽炎 ( No.9 )
日時: 2013/06/26 20:32
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: .2ijTo35)
参照: 明日テストだけど更新。

 『ゆ、優香!?』
 どうして僕がここにいる事を知っているのだろうか、それに、俺のことは「もういい」んじゃなかったのか。

 「憐君だって苦しんでた筈なのに、さっきはさよならの一つも言えなくて、本当にごめん。」
 『いいんだって。そんな事。』僕は宥めるように彼女に言った。
 「どうせもう終わっちゃうから?」彼女がそう言った時、海辺がキラキラと輝いて見えた。カモメも鳴いていた。

 『優香.... 好きだよ。』
 なかなかの声量でそんな事を言ったので、周囲から僕等への目線が集中した。
 我に戻った僕はやっとそれに気がついて、恥ずかしいと気づいた。彼女を見ると、彼女は赤面して笑っていた。「ちょっと、恥ずかしいじゃん。」その顔を見て、可愛いな、と僕は思った。

 僕は何も考えずに、優香に抱きついた。一瞬、体が勝手に動いてしまったのかと思った。
 「ちょ...、ちょっと....。」優香はそう言いながらも、抱き返してくれた。

 一応言っとくが、この一連の流れは、こんな人の多い浜辺で行われている事だった。



 「じゃ、じゃあ....またね。」人目から離れた頃、彼女は言った。
 彼女のその言葉を聞いて、やっと僕は、もう本当の別れなのか、と思った。いずれ会えるかもしれないが、会えないかもしれない。そう思うのが普通だが、僕はそんな事はどうでも良かった。

 ....さっき抱いた感触が残っている限り、僕は彼女をずっと好きでいられるから。

 『これから先、嫌な事もあるけど、二人で頑張って行こう。』
 「うん....。」
 『じゃあ、バイバイ。』

僕はこう言って、彼女に背中を向け歩いていった。

「ま、また!会えるよね!!それと、憐君も頑張ってね!!応援してるよ!!!」


彼女がそう言ったのを、僕は振り返らずに手を振って返した。