ダーク・ファンタジー小説

Re: 陽炎  ( No.93 )
日時: 2015/01/10 17:18
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: Yp4ltYEW)
参照: 参照1400ありがとう!

 早紀曰く、次の時間は数学らしい。
 数学は大の苦手で、証明? 二次関数? となってしまう僕の横で、彼女はせっせと準備していた。
「数学かよ、嘘だろ……」
 すぐ隣の生徒会長様に助けを求めるように、頭を抱えて机に突っ伏していると、僕の読み通りの言葉を彼女は言った。
「大丈夫、分からないことあったら、教えてあげるよ」

 さっすが!
 僕はすぐに机から頭をあげ、彼女を見た。

 すると、彼女は僕のほうを向いていなかった。
 後ろ髪が見えた。彼女が僕以外の人と話していることに気がついた。その言葉は僕に対して言ったものではなかった。
 恥ずかしい、なんて感情は当然だった。……別に、悲しいだなんて思う理由はないけど、ちょっとだけショックだった。

「眠かった?」
 気がつくと、横で早紀の声がした。
 その声はさっきより近くで聞こえたが、一応彼女のほうを向いてみる。
 僕のほうを向いていることに気づく。「まぁ、眠くないわけじゃないけどね」

 嘘だった。本当は全く眠くなんてなかった。でも何故か口から出た言葉が、それだった。
 チャイムが鳴って、クラスの人達が一斉に席につく。ワンテンポ遅れて、先生が教室に入ってきた。
 先生が僕を見て一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに表情を戻した。「あ、君が話題の転校生かー」
 何が話題なのかと疑問に思ったが、彼女はさらに話を続けた。「名前はなんて言うの? …涼野、憐舞? 変わってるしなんか涼しげな名前ねえ」
 よく言われます。と返すと同時に、まぁ涼しげな名前っていうか元から名前に「涼」って入ってるし当たり前だと思った。

「えーほんと? よく言われる?」
 隣の生徒会長が冷静に揚げ足をとってくる。よく言われる訳ないじゃないですか! 言った二秒後に自分も同じこと思ったんですよ!!
 いずれにしろ、面白そうな数学の先生だった。