ダーク・ファンタジー小説

Re: 陽炎 ◆銀賞ありがとう! ( No.96 )
日時: 2015/01/21 18:23
名前: をうさま ◆qEUaErayeY (ID: Yp4ltYEW)

「まぁ、部活に入るのが無理なら無理でいいんだよ。皆それぞれ事情ってのがあるし」
 押しが過ぎるわけではないが、彼女は自己抑制した。さすがにわきまえている。

「大丈夫だよ。家に帰っても勉強も何もしないし、学校休みの日とかも寝てゲームしてるだけだから」
 僕が笑って言うと、彼女もつられて笑った。それに、この流れだと僕の言葉は社交辞令に聞こえるが、実際は全くそんなことはない。休日に寝てゲームしているのは本当だし、冷静に考えてみると、全然笑える話ではないことに気づいた。事態はもっと深刻だ。

「そろそろ教室に戻らない?」
 言われて、はっとした。そういえばそろそろ休み時間が終わるんじゃないか。
 まさにそう思った瞬間、チャイムが鳴った。このときだけなぜか僕の予感が的中したことに驚きを隠せない。

 そう思うより先に、体が動いた。
 授業遅刻はマズい。僕だけならともかく、彼女まで巻き込むのはダメだ。
 当然ながら、彼女は全力疾走した。チャイムがなると同時に走り出した早紀は僕をとっくに振り切って、既に僕の数m先にいる。
 自動的に、僕が彼女を追い越す構図になる。僕は負けじと彼女に続き、二人で誰もいない廊下を走り回った。