ダーク・ファンタジー小説
- Re: ガラスの靴(シンデレラ)【白雪姫の林檎短編集】 ( No.30 )
- 日時: 2013/07/29 20:10
- 名前: みみぃ ◆xFy/V8wehE (ID: 8jXgF63k)
本編でござります(^_^)v
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次の日。
私は部屋掃除、暖炉掃除、庭の手入れ、食器洗いなどを手短に済ませ、軽い軽食
をとっていた。
食べ終わったあとで、ソファに寝転ぶ。
あたたかい暖炉のそばにいると、心まであたたかくなった気がした────
(でも、私はempty。心は無いといけない。)
emptyの心は空っぽ。あたたかくなどならない。
「私も……あの娘みたいに……」
その言葉を最後に、エルフの記憶は途切れた。
夢を見ていた。
青い、蒼い、夢。
波に揺られているみたいで、気持ちい。
この空間には私と
あなただけ。
『やっと会えたね。エルフ』
「お久しぶりです、お姉さま」
『そんなかしこまらなく良いわよ。ふふふっ』
「いえ、私はemptyですから」
『でも、私たち
双子じゃないの』
「もう、お姉さまったら」
感情の無い、淡々とした透き通るように美しい声
喜びが満ちあふれ、明るく陽気な声
なんの表情も表れていない、パーツが整った顏
見る度にコロコロ変わる表情で、そのたびに顏が台無しになっている顏
同じ声で、同じ顏の2人は、夢が覚めるまでしゃべりつづけていた。
「……お姉さま、そろそろ」
『え、もうそんな時間なの!?』
「はい。それでは、また」
『ばいばーい、また話そ─ね──』
……瞳を開ければ、もうそこはすでに現実で。
目の前に誰かがいるわけで。仕事ができない。
「……アル様、どいてください」
「……くくくっ」
「なにがおかしいのですか?」
「いや、emptyのおまえも寝るんだな」
「……仕事に取りかかることにします」
平和な日々。
壊れる日は、もう目前に迫っていた。
深夜0時ごろ。
1.emptyは、たとえ貴族の娘であっても、その家につかえること。
2.emptyは、装飾品を最小限に抑えること。
3.emptyは、主人または、その関係者の命令だけを聞くこと。
4.emptyは、結婚してはいけないこと。
5.emptyは、名家にうまれた場合は、代々受け継がれている靴を履くこと。
これを、empty5大制度と言う。
幼いころに父──いや、主人からもらったボロボロの1枚の紙切れを、ベッドの上で
エルフは見ていた。
主人から「何回も読め」と言われたため、こんなにボロボロになっている。
「……もし私もcommonだったら、おと──ご主人様は私を愛してくれた?」
エルフはそれを読み返して、瞳を閉じた。
翌日の朝。
高級な質感のドレスに、結い上げられた髪。
いつもより念入りに掃除したためか、何百万、何億の価値のある調度品が光り輝
いている。
そう、今日は年にたった2回しかない、パーティの日。
今回は2度目で、1度目は、リンの誕生日。
そして今回は───────
「アル様、お誕生日おめでとうございます!!」
ロビーにいるアルが、街の女の子たちから花束を受け取っていた。
「おお、ありがとう」
アルが柔らかく笑うと、女子たちが騒ぎ始めた。
「かっこいい……」
「マジ王子……」
「おいたわしや……」
「アル様、そろそろお時間です」
「ああ、そうか」
ギロッ
……なんかすごい怒りの視線を感じたのは、気のせいだと思いたい。
もうお分かりのとおり、今日はアル様の"生誕祭"だ。
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