ダーク・ファンタジー小説

Re: 世界は君の掌に ( No.2 )
日時: 2013/07/09 21:47
名前: クラウド (ID: 4V2YWQBF)

【第一話】〜運命のトビラ〜


頭が痛い。頭のなかでガンガン鈍い音が鳴り響くようだ。
オレの眼に映るビジョンは忘れてしまった、思い出したくなかった光景そのものだ。普通の人からすればその光景は親子が幸せそうに公園で遊ぶという微笑ましいものだろう。
しかし、オレにとってはもう戻ることのないあの頃の光景は苦痛以外のなにものでもない。
「やめてくれ」そう呟こうとした瞬間ビジョンはぼやけ始める。
そしてそしておれの眼には暗闇だけが残った。
あぁ、ようやく悪夢からこの苦しみから抜け出せる・・・・

目を開けながらオレは考える。オレが置かれているとんでもない状況を
先ほど俺は苦しみから抜け出せると感じた。だが、訂正しよう。オレは悪夢から覚めた。うん、これは変わりない事実だ。
だが、苦しい。
理由は簡単だ。オレの上に叔母のルークが足をおいているからだ。

「エリアァァ・・・今何時かわかるかなぁ・・・?」

ルークは笑っている。が、目が笑っていない。
はっきり言うと怖い。オレは断言できる。世界で一番恐ろしいのはテロリストでもなければ頭の狂った狂人でもない。ルークだ

そしてルークが怒っている理由が先ほどのルークのセリフで分かる。
寝坊した。それ以外考えられない。
オレはその後、時計を見て冷や汗をかきルークに急かされながら
朝食とり、その際パンを喉に詰まらせ、せき込みながら家を出た

家を出たら全速力でスペルを唱え、空を飛び、学校へ向かう。
途中ほうきに跳ね飛ばされたが気にせず飛び続ける。

だが、足を痛めてしまった・・・
慰謝料は後でもらおうなどとくだらないことを考えながら学校へ向かった。

校門の上を通りすぎるとオレは屋上へ降りる。
もう昇降口で上履きを履く余裕はない。靴下で階段を降り教室へ向かう。教室が近付くにつれ、騒ぎ声が大きくなる。
勢いよくドアを開けると騒ぎ声は一瞬静まるが、また大きくなる。

先生がいないということはオレは遅刻はしてないということになる。
なにせ、担任は毎日ホームルームを始める時刻ぴったりに教室に入ってくる。

あと5分でホームルームが始まる。
5分間何をして時間をつぶそうかな・・・
そんなのんきなことを考えていたときだった————————

ドガアアアアアアアアン——————!!

近くで爆発音が聞こえた。
耳が張り裂けそうなくらい大きな音だった。
しかしそんなことよりもオレは目の前で起きている光景に目を疑った。

空間に亀裂が入り大きな穴があいた

その穴を何かに例えるとしたらブラックホールとしか言いようがない
そのブラックホール(仮)はものすごい力ですべてを引き寄せる。

ブラックホールは(仮)はすべてを暗闇に包み込んだ・・・・・
オレはそのとき「こんな死に方も変わっていていいかもしれない」と思った。

その時だった———

「グオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・!!!!」

また耳が張り裂けるのか・・・・・
もう大きな音はうんざりだよ・・・・

そう言いたくなるほど大きな叫び声が暗闇に響いた。
だが、そんなことをいう暇もない。とてつもない浮遊感が体の感覚をくすぐる。
オレは落下している。この暗闇のなかで落下している。

あー、落ちた底には何があるんだろう・・・・・
オレの頭は生き延びることを無理と考えてるらしく、そんなどうでもいいことが脳裏を横切った。

「グギャアアアアアアアーーーー!!!!!」

さっきより叫び声は近くなる。
でも、どうでもよかった。何が出てこようとも何が起ころうともオレはこの暗闇の中で息絶えるのだから・・・・・・

バサッバサッと何かが羽ばたく音が聞こえる。

あぁ怪物がいるんですね。はい、わかります。

だが次の瞬間オレの予想を上回ることが起きた。

ドラゴンがいた。これは予想どうり。非常識だが意味分かんないこの暗闇の中ならあり得る。

ドラゴンが大量発生していた。これも予想どうり。

ドラゴンの上に少女が立っていた。理解不能。

怪物の上に立とうと思う人間はいないだろうし、そもそもそんなことできない。

その少女はオレの制服の襟ををつかみ、

「おい、もっとスピードを上げろ」

とつぶやいた。すると途端にドラゴンの飛ぶ速度は格段に速くなる。
オレは予想を遙かに上回る事態に呆気にとられていた。
すると、少女はニヤリと不敵な笑みを浮かべ

「マヌケな面だな」

と笑いながらつぶやいた。

これがオレの運命を大きく変える出会い—————

アレン・グリファニスとの出会いだった。

この時にオレは運命のトビラを開けてしまったんだ