ダーク・ファンタジー小説

Re: 世界は君の掌に ( No.4 )
日時: 2013/07/11 20:06
名前: クラウド (ID: 4V2YWQBF)

 【第二話】〜新たなる世界〜

「マヌケな面だな」

少女が開口一番オレに向かって言った言葉がこれだ。
いや、誰でも女の子に襟をつかまれ、ましてやその女の子がドラゴンに乗っていたら誰でもマヌケな面構えになるだろう。
それが分らないらしいその少女はニヤリと不敵な笑みを浮かべている。
そして、オレは不満なことが一つあったのでようやく口を開くことにした。
あ、不満なことといってもマヌケと言われたことではない。
そうオレが不満だったのは—————————

・・・オレが不満だったのはいつまでも襟を掴まれていたからである。
もう襟を掴まれてから3分は経っている。
落下するオレを助けるため、襟をつかんだのは仕方ないだろう。
だが3分も掴んだままにするのはどうだろうか。そのせいでオレは宙ぶらりんになり、暗黒の世界に落ちそうで落ちないという非常に恐怖じみた体勢になっているのだ。
「あの、いつまで襟掴んでるつもりなんだ・・・?」

オレが襟を掴み続けられてることに不満の声をあげると———

「黙れ、ウジ虫」

こんな言葉が返ってきた。

「っ・・・!!いつまで襟を掴んでるのかとオレは聞いてるんだが・・・?」

「黙ってろ、ウジ虫」

・・・質問には答えず、黙れとほざき、挙句の果てにはウジ虫となどと罵った。さすがのオレも堪忍袋が爆発したようだ。

「おい・・・誰がウジ虫だと・・・?」

「貴様がウジ虫だと言ったんだ」

「な・・・!おい・・・さっきから聞いてれば人のことをウジ虫ウジ虫と・・・———」

「これだから、聖世界の人間は五月蠅くて困る。少し静かにしていろ」

そう呟いた後、少女はスペルを唱え始めた。聞いたことがないスペルだった。
スペル詠唱が終わり、魔法が発動すると途端にオレの体は締め付けられたように苦しくなる。手足は動かすことができず、身動きが取れない。
少女はオレの襟を掴んでいたてを放し、オレはドラゴンの背に横たわる体勢になる。
だが、オレを締め付ける苦しみは消えず、呼吸すら苦しくなる。

「どうだ・・・?本物の魔法は・・・?これは低級な魔法だが効き目はそこそこある。まぁ大抵、守備魔法に掻き消されてしまうのだがな・・・」

本物の魔法・・・?どういうことだ?オレ達が使っている魔法は偽物だというのか?そんな疑問が頭を過ぎる。

・・・そんなとき後方から何かが接近してきた
ぼやける視界を凝らしながら見ると、巨大な鷲に乗った男がいた。

「アレン。貴様を【邪竜の罪】の大罪人として今ここでフィルネス国上級騎士フーヴァンが処刑する。」

そのフーヴァンと名乗る騎士は巨大な鷲の背でそういった。
こいつが言っていることが本当ならばこのアレンという少女は大罪人でフーヴァンという騎士はアレンを追いかけてきたということになる。
大罪人・・・いまオレの隣で仁王立ちしているこの少女が大罪人・・・?
そんなことないのを願い、オレはアレンの方に目をやった。
アレンは不敵な笑みを崩さずに言う。

「処刑する・・・?寝言もいい加減にしたらどうだ?貴様のような奴に私を殺すことができるとでも・・・?
そもそも貴様のような雑魚がよく上級騎士になれたな・・・」

あきらかに挑発している。だが、フーヴァンはそれに動じていない。

「ふふふ・・・やはり最凶の大罪人だな。俺を挑発しているのか?余裕たっぷりだな・・・。だがその余裕がいつまで持——————」

そこまで言いかけたところでフーヴァンの体を光線が撃ち抜いた。
フーヴァンの体は暗闇の世界に沈んで行き、残された鷲を待ってましたとばかりに大量のドラゴンが食いちぎる。
今の光景をみて俺は確信した。
この少女・・・アレンは本物の大罪人だ。それもかなりヤバい奴だ。
人を殺したというのに不敵な笑みは崩れない。
オレはコイツに殺されてしまうのだろうか・・・
身動きが取れない体でオレはジッとアレンを睨みつけた。
それに気づいたアレンがオレにささやく・・・

「お前は殺さない・・・。お前を人質として連れてれば少しは追手が少なくなるだろうしな・・・」

アレンはククッと笑うとドラゴンに指示を出した。

「おい、反世界に帰るぞ。全速でとばせ」

するとドラゴンはグオオオオオオオオオオオ・・・・!!と鳴きさらにスピードを速める。

オレはもう何もできずにいた。
どれくらいの間そうしていただろうか・・・
気づくと暗闇の世界にぽっかりと穴ができており、それは一見出口のようだった。
だがそれは出口ではなく、新しい世界への入り口だった。


その穴をつきぬけると一面には、見渡す限りの新世界が広がっていた。