ダーク・ファンタジー小説
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.118 )
- 日時: 2012/11/04 13:42
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第三話 ただいま
重たい扉を丁寧に手で開ける。
少年は無表情に研究所の中へと入っていく。
たまに出会う博士の卵たちが冷たい目でこちらを見る。
造られた当初は皆優しかった。
辛かっただろう、とか、頑張ったね、とか。
でも少年は人間が嫌いだった。
無愛想で無口な少年に、周りの人々は徐々に関わらなくなっていった。
『人間兵器になったからといってあそこまで無愛想になるの?』
『さぁな。感情でもとられたんじゃねぇの』
『別に関係ないもの』
なんと言われようと少年には関係なかった。
逆に関わってもらわない方が好都合だ。
最奥の部屋の扉をノックする。
中に人がいることは分かる。
だけどそれが常識だ。
「博士、只今戻りましたが」
そういうや否や扉が勢いよく開き、中から飛び出してきた人物によって少年は抱きしめられた。
「泡沫ーっっっ!」
ギュゥゥ〜と力を強める藍色の髪。
少年、泡沫はため息をついた。
「おー、大丈夫か?泡沫ー」
こちらを見下ろす白衣の男。
泡沫はコクリとうなづく。
「おい、舞異舞異。泡沫放してやれ」
「嫌だ」
即答。
しかもキッパリと切り捨てられた。
ニィーアは大きくため息をついた。
「・・どけ」
「嫌だ」
「鬱陶しい」
「知ってる」
会話が続かない。
沈黙が流れる。
こんな空気がニィーアには苦痛だった。
人間関係で苦労したことなんてなかった。
これまでの人生でもそこまで深く関わらなかったからだ。
しかし、今は違う。
自分が造り出した人間兵器二体。
なぜかこの二人は仲が悪い。
いや、お互いを嫌っているというわけではない。
舞異舞異が、なぜか異常に泡沫に興味を持ってしまい、それが泡沫にとっては邪魔で鬱陶しいのだ。
悪いといえば舞異舞異なのだが、泡沫の態度も悪い。
結局どっちもどっちなのでニィーアは毎回苦労するのだ。
「(ってか、なんで泡沫に興味が湧いたんだよ)」
頭をかきながらふと疑問を思った。
「どけ」
「いーやーだー」
そこで舞異舞異は顔を上げる。
「まだ言ってないでしょ」
ビシッと指を突きつけられ、泡沫は言葉に詰まる。
「・・・・・・ただいま」
それを聞くと舞異舞異は嬉しそうに笑って離れる。
そして笑顔で言った。
「おかえりなさい!」
少しうつむきながらも泡沫は立ち上がり、うなづいた。
ニィーアはその様子を見て微笑みを無意識のうちに作っていた。
「(ま、いっか)」
いつも通り、泡沫を部屋の中に入れて三人で泡沫の任務内容を聞いていた。