ダーク・ファンタジー小説
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.136 )
- 日時: 2013/04/05 10:16
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第十四話 後輩の伝言
沈黙を破ったのは彩女の怒鳴り声だった。
「ふざけるな!赤子を使うなど・・!」
「でも赤子からの製造やと今の人間兵器の成果よりも大きいものが得られるんよ」
微笑む幽に、彩女はもう一度怒鳴る。
「自分の意思で人間兵器になるものしか私は手をつけない!赤子など意思もなにもないではないか!なぜ・・」
確かに、彩女は自分の意思で人間兵器になることを望んだ者に手をつける。
朽葉もそうだ。
自分から申し出たのだ。
「魔神さんが怒るのは無理ないね。あの人も薄々気づいていたのか、猛反対してたからね」
「当たり前だ!」
「僕はその研究を中断したんや。でもな、後輩君は僕の研究を元にして新しいことに取り組んだんよ」
新しいこと?と彩女は眉をひそめた。
「お腹の中にいるときから、造っちゃうんです」
ブロックが言った。
その言葉にはなんの感情もこめられていない。
「母胎にいる子を使おうとしちゃったんだよ」
「〜ッ!」
怒りをあらわにする彩女に、幽は落ち着いて、と言った。
「でもそれは出来なかった。だって赤ちゃんは新しい家族だからね」
「ならば・・」
「細胞を使った」
「さい・・ぼう?」
コクンとうなづく幽。
「母胎の赤ちゃんの細胞を使って増殖させて、人間の形にしてっていうわけのわからない研究。それから兵器にするんや」
「・・・じゃ、じゃあ・・・」
そうだね、と幽はうなづいた。
「その子はそんな実験によって造られたから、正真正銘、兵器として生まれたってことになるね」
「僕に・・そんなことがあったんですか・・」
「辛い?」
ブロックに問いにニコラスは首を振った。
「辛いのはきっと、死んじゃった友達。兵器として生まれてきたのであっても、友達とは違って僕は生きてるから」
「生きているほうがはるかに辛いと思うがな」
彩女が言う。
弱々しくニコラスは微笑んだ。
「辛いっていうのを感じる前に、幸せ、なんて感じたことないからね」
「過去がないからやね。まぁ、そんな後輩たちの馬鹿な実験で造られた人間兵器数百体。でもやっぱり完全じゃなかったらしくて一気に処分」
わざとらしくパンッと手を打って開く。
「残った一体は博士たちを殺害して現在逃亡中。その一体がこの子、ニコラス君なんだよ」
ねー、と笑いかける幽。
「何故貴様はそれを追いかけるのだ?答えになっていない」
「うん、僕のことを本当に慕ってくれていた子がその研究所にまだ残っていてね。虫の息だったのに病院にいかずに僕を探して伝えてくれたんだよ」
哀しそうにつぶやく。
「『あれは兵器だから、人間としての心はとても薄い。だからもし本当にただの兵器と成り果てるときは・・壊してください』」
ってね。
「じゃあその後輩の最後の言葉通りそいつを追っていたのか」
「まーね」
そういうと幽は妖しく唇をなめた。