ダーク・ファンタジー小説
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.137 )
- 日時: 2013/03/08 19:00
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第十五話 保護対象
ゴボッと水の音がした。
何処からだろう、と恐る恐る目を開けてみると、あたり一面水。
自分が水の中に入っているのだと、気付いた。
確か、自分は、彩女と・・。
「(そうか・・。私は機能停止状態になって・・・)」
先ほど起こったことを思い出す。
パニックになるとか、そんなことはありえない。
凪は至って冷静だった。
「(とはいえ・・・。回復は順調だから・・そろそろ出ようか)」
一人うなづくと、透明な特殊ガラスに手を当てる。
そして・・。
「・・じゃあ、えっと・・」
「あ、幽や。よろしくしてな」
ニコラスの視線に気付いたのか、幽はにこりと笑った。
「幽博士は、僕を破壊しに来たのですか」
「まー、そうなるんやけど、とりあえず様子を見ようと思ってな」
「・・・そうですか」
なきそうな笑みを浮かべた。
彩女が空になったカップを人差し指にぶら下げる。
「それで?」
「何が?」
彩女の言葉に挑発的に返す。
「そいつは貴様の保護対象に入るのか?」
そうやなぁ、と悩むように伸びをする。
と、ブロックに目を向けてどう思う?と尋ねるように首をかしげた。
「・・・つみきは別にかまわない。だけどつみきは最優先で幽博士を護る」
「そっか。ありがとね」
笑いかけて彩女に視線を戻す。
「ニコラス・フラメルは僕の保護対象や。責任は僕が取る。やから今は僕に任せて魔神さんは引き下がってくれへん?」
お願いするように言っているが、これは決定だ。
朽葉は彩女の様子を伺う。
数秒だってから彩女は息をゆっくりと吐いた。
「いいだろう。凪のことは先ほどの貴様からの情報でチャラにしてやる」
ありがたく思え、というように彩女は見据えた。
そんな視線をものともせずに幽も見つめ返す。
「・・あの博士さんは一体何者ですか?」
ブロックに小声で尋ねる。
「幽博士のこと?」
「そう。魔神彩女博士にあんなふうに話す人は初めて見ました」
「元同じ研究グループのメンバー。対等な立場にあった者同士」
へぇ、と朽葉は声を上げた。
「あの博士さんってそんなに凄い人なんですね」
幼いのに、と続ける朽葉に、ブロックは首をかしげて見上げる。
「幽博士はあれでも25です」
「25歳ですか・・って、えぇっ!?」
思わず大きな声が出た。
しまった、と思ったが彩女はため息をついてこちらを見て、幽はミルクを飲んでいる。
「あ、すみません」
「構わないよ」
「あぁ。話の内容は聞こえていたからな」
幽と彩女はうなづく。
「いや、とても若く見えたので・・」
「仕方が無い。こいつは童顔だからな」
指で幽を示す。
苦笑しながら幽はカップから口を離した。
カップの中は空っぽだ。
「よく言われるよ」
「私も初めて会ったときは驚いたさ」
肩をすくめて答える。
「・・・あ」
「・・くる」
ニコラスとブロックの声が重なった。
「どうしたん?」
「・・博士、氷が・・」
「氷?」
「くる」
そういうと同時にガラスが割れる音が響いた。