ダーク・ファンタジー小説
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.144 )
- 日時: 2013/03/08 19:02
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第二十話 退化
「え?」
目を疑った。
腕が、破裂した。
「幽博士ぇ!」
ブロックが叫んだ。
幽の右腕は吹き飛んでいた。
突然の事で反応が出来ていないのだろう。
幽は目をぱちくりとさせた。
「凪ぃぃぃぃぃっっ!」
彩女が凪の胸倉を掴んだ。
白いワンピース一枚の凪。
水に濡れていて、自分も濡れることも構わずに彩女は凪に詰め寄る。
「貴様、何故・・。何故、私の命令を無視したっっ!」
ギリッと唇をかむ。
朽葉はそんな彩女を落ち着かせようと近づく。
そして、気付く。
凪の口角がつりあがっていることに。
凪は笑っているのだ。
「凪・・なんで・・笑ってるんですか・・・」
朽葉はゾクリと、ありえない寒気を感じた。
その言葉に、彩女は凪の顔を見つめる。
そして目を見開いて、凪を思い切り叩いた。
パンッと渇いた音がした。
「いい加減にしろっ!どこか故障しているのか!?」
「博士、博士・・・。博士ぇ・・」
彩女の怒鳴り声とブロックの泣き声が重なる。
「・・・あの日も・・・こんな・・・ことが・・・」
ニコラスは今の状況を見て震えた。
あの日、自分が博士たちを殺した時。
あの日もこんなことがあった。
博士たちの赤い血。
真っ赤に染まる白い服。
怒鳴る声。
泣き声。
笑っているのは・・・・・自分だ。
「あ・・・・ぁ・・・・・・っっ!!」
錯乱状態に陥るニコラス。
「凪!?聞いているのか!」
そんな彩女の声。
凪はゆっくりと顔を上げて、ペタリとその場に力なく座り込む。
そして口を開く。
「彩女・・・」
「何だ!?」
「彩女・・・一人・・・・悲しい・・・守る・・・私が・・大切な・・・彩女を・・友達・・・だから」
そういって凪は弱々しく微笑んだ。
彩女は目を見開く。
「凪・・・?・・・まさか、退化しているのか?」
ありえない、と彩女はつぶやいた。
退化しているにしても、凪が自分を『大切な友達』と呼ぶことなんてありえない。
「凪、凪?お前・・大丈夫か?凪・・・?」
眉をひそめながら語りかける。
「彩女の・・敵は・・・・・」
スッと細められた瞳。
その先には倒れた幽が。
「殺す」
冷たく声がした。
凪が走り出す。
彩女が止めようと声を張り上げる。
ニコラスがそれを見て叫び、朽葉が凪を追いかけ、ブロックが凪を憎々しげに睨み・・・。
「危ないではないか。小娘」
ニィッと笑う声がした。
途端、凪は何かに蹴飛ばされた。
「おいおい、彩女。こんなとこで止まってる場合じゃねぇんだよ」
凪を蹴飛ばした影の後ろから現れたのは背の高い青年だ。
「は・・・遥・・・?」
「あーあー。昔みたいに『遥さん』って呼んでくれないのか?」
遥は意地悪そうに笑った。