ダーク・ファンタジー小説

Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.150 )
日時: 2013/03/31 20:33
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第二十四話 退場願う



『ぅ・・・ん?』


目を開ければ白い部屋。
動こうとして勢いよく起き上がれば、どこか妙な感じがした。


『!』


両手首が背中で一つに縛られている。
足首には鎖があって固定されている。
つまり、動くな、ということだ。


『言霊・・・大丈夫かな』


きっと白い服の大人たちは自分には何もしないだろう。
でも言霊は・・・。

ギュッとまぶたを強く閉じた。

















どれだけ時間がたったのだろうか。
いや、全然経っていないのかもしれない。
白い部屋で待っている間、誰も来なかった。
孤独が嫌い、というわけではないけれど、こんな状況は初めてだった。
だからニコラスは出来るだけ小さくなって目を瞑っていた。
怖いのか、寂しいのか、悲しいのか、分からない。


『・・・え?』


鎖が、手首を縛っていたものが、音を立てて切れた。
誰が切ってくれたのか、とキョロキョロと首を振れば、見たことのある人がいた。


『えっと・・あなたは・・・』
『ごめんなさい。僕じゃ止められなかったから・・・。早く行ってあげて・・』


涙をぽろぽろとこぼしながら扉を開ける。


『早く行かないと・・・』
『で、でも・・』
『みんな、処分されてしまうんだ。早く!』


背中を押されて、ニコラスは走る。
みんな?


『(みんなって・・誰?)』


『処分』と彼は言った。
何を?誰を?

思い当たったのは、小宮にいたあの・・・。


『!』


ゾクリと何かが背筋を通った。
ニコラスは足を速めた。










やっとたどり着いたのは生まれた場所。
大人たちは『研究室』だと言っていた。

扉を勢いよく開ける。


『___________________!』


目の前に広がるのは悲惨な光景。
何処を見ても、見たことのある顔ばかり。
大人たちだけじゃなくて、あの子供たちもいて。


『何故ニコラス・フラメルを部屋から出したの!』
『も、申し訳ありません!警備システムが一瞬切れていました!』
『チッ。使えない奴らだな!』


舌打ちをする。
その大人は持っていた銃の引き金に手をかける。


『まぁいい。あとはこの子だけだからね』
『さっさと終わらそう』


この子。
そこにいたのは、良く知っている顔で。
腰まである灰色の髪。
前髪から覗くのは左右の色が違う瞳。


『言霊になにするんだよっ!』


掴みかかろうとしたけれど、他の大人に体を抑えられた。
さすがに数人の大人相手はムリがある。


『ニコラス・フラメル。いい機会だから見ておくがいい』


女性が言い放つ。


『この世界は強い者だけが勝ち抜き生き抜いていくんだ。友達なんて不必要だ』
『何言ってるんだよ!』
『我々は成功したお前だけを生かすことに決めた。失敗作の者たちには退場願う』


淡々と告げられる。


『どういうことだよ・・・なぁ・・・』
『歌音言霊』


言霊の瞳がゆっくりと開く。


『残念だ。お前も同じく成功したのに、我々に歯向かうとは・・。だから・・失敗作として処分しよう』
『・・・』


まぶたを閉じる。
けれど、その表情は柔らかい。
運命を受け入れてるように、ただ静かに。


『残念だ』



渇いた音がした。