ダーク・ファンタジー小説

Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.160 )
日時: 2013/04/13 14:20
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第二十八話 二人の間柄


彩女は凪を気絶させ、朽葉と共に研究室へと引っ込んだ。
原因を詳しく調べたい、らしい。
引っ込む際に一言、「勝手に開けるな」と言い放った。

「昔はもう少し可愛げあったのになぁ・・・」

はぁ、と悲しそうにつぶやいた。

「遥、ジジくさいぞ・・・」

白狐が横目に見て言い放った。

「うっせーぞ、白狐。こっちは終わったぜー」
「こちらももうすぐ終わる」

ニコラスと共に白狐の側に近寄れば、幽の腕は随分とよくなっていた。

「すげぇな・・・」
「な、何で治っちゃってるんですか?」
「これくらい朝飯前だ」

幽の腕は元通り、とはいかないが応急処置は完璧だ。

「応急処置しか私は出来ぬが、上手くいけば腕は元通りに使えるぞ」

ブロックに優しく言うと、安心したようにブロックは微笑んだ。

「幽博士・・良かった・・・」

まだ意識は取り戻していないが、ブロックが手を握れば握り返す、という反応を返した。

「白狐、やっぱり優しいなぁ、お前は」

ニッと笑いかける遥。
仮面をずらして顔を見れるようにする。
右側のみがこちらからは見える。
白狐は照れたように微笑み、すぐにハッとして咳払いをする。
遥の手を弾き、仮面を被り直す。

「可愛いなぁ、白狐」

ニコニコと笑う。

「う・・・うるさい・・・」

遥から顔を背けて、白狐は言葉を返す。

「照れるなって」
「照れてなどいない、馬鹿者」
「ツンデレか?」
「遥、いい加減怒るぞ・・・」

そんなやり取り。

「あの・・・」

ニコラスがおずおずと声を上げた。

「どうした?」
「もしかして・・その・・お二人の間柄って・・・恋人ってやつですか?」

間違っていたら恥ずかしいし相手に対しても失礼だ。
ニコラスはそんなことを考えながら言った。
暫らくの沈黙。

「あ、間違ってたら・・ごめんなさい・・・」

ペコリと頭を下げる。

「そうだ」

驚いて顔を開ければ綺麗に笑う遥の姿。

「まぁ恋人っていうか、妻だよな」
「つ、妻ぁ!?な、な、な・・・こ、この・・私が・・・妻だとっ!?」

サラリと言い放てば、白狐から驚きの声が上がる。
声が裏返っている。
きっと仮面の下では慌てた表情があるのだろう。

「何故私が・・」
「いやぁ、恋人よりは進展してるかと・・」
「そ、それは・・恋人といえば恋人だが・・うむ・・」

モゴモゴと小さくなっていく。

「じゃあ妻だろ」
「だから何故・・っ」
「嫌か?俺の妻になるの」

遥にそう言われれば、白狐は言葉を詰まらせた。

「い・・嫌ではないが・・私などが・・いや・・・ぅん・・・」

先ほどまでとは打って変わって、可愛らしい印象を受ける。

「博士と人間兵器が・・」

ポツリとニコラスはつぶやいた。
博士は人間兵器を造って、自由に操って、道具のように使う。
人間兵器は使われるだけ。
ただ従順な僕(しもべ)。
それなのに、目の前の二人は当てはまらない。
遥は人間兵器を一人の人間、としてみているのだろう。
だからこそ、そんな間柄になれるのだろう。

「遥博士・・・」

ニコラスは声をかけた。

「ん?」
「僕は・・・あなたなら・・信用できると思います」

かつて自分たちを利用しようとした人間とは違う。
ニコラスはそう信じることにしたのだ。

「僕に出来ることなら、是非協力させてください!」

あの辛い過去以来、初めて心の底からの笑顔を、ニコラスは見せた。