ダーク・ファンタジー小説

Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.210 )
日時: 2013/07/08 20:10
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: 1QpV5ZBE)

第四十四話 もうすぐ


甘い匂いが充満する部屋の中。
癖のついた髪の毛がフワフワと揺れている。

机の上にあるのは青い封筒。
差出人は書いていない。
既に開封済みだ。

「勝ってうれしい花いちもんめ♪負けてくやしい花いちもんめ♪」

側に飾ってある花を一輪手に取る。
真っ赤な薔薇。

「たんす長持ちどの子が欲し」

薔薇の花を愛でるように優しく撫でる。

「あの子が欲しい♪あの子じゃわからん♪」

花びらを一枚抜こうとして、手を止める。

「相談しよう そうしよう♪」

ふぅ、と息を吹きかける。
そして・・・。

ニコッ

「決ーまったぁ」

グシャッ

薔薇が潰れた。
真っ赤な花びらが床に落ちる。
カーペットは白く、しみ一つない。
雪のように白いカーペットの上に、血のように赤い花びらが舞い落ちる。

「しーちゃんが欲しい」

クスクス、とヒストラは嗤った。

「可愛いなぁ、しーちゃんは・・・」

ポケットからロケットを取り出す。
中にあるのは一枚の写真。
そこに写っているのは幼い頃の紫黒。
今とは全く違う、満面の笑みを浮かべている。

ニィ、とヒストラの口角が上がった。

「あ・あは・・あははははははははははははははははっっ!」

お腹を抱えて笑う。

「もうすぐ、もうすぐなんだよっ!この世界は滅びるから!哀れな愚民共の可笑しな理想によって!もうすぐ壊れるよ!さぁ、破滅へのカウントダウンだよっ。派手に踊ろうよ!楽しく狂おうよ!」

ヒストラの笑い声が響いた。

その様子を扉の先から見ていた帝爛は、悲しそうに目を伏せた。

「・・・・」

何も言わずに踵を返す。

「プリンセスが、俺の、存在理由」















『・・・君はだぁれ』

雨なのか涙なのか分からない、濡れた瞳。

『俺、は・・・』

ひんやりと冷たい小さな手。

『ねぇ、独りなら・・・』











『ウチと一緒に・・・いてくれないかなぁ・・・』



「・・・プリンセスが望むのなら・・俺は、例えそれが罪であろうとも・・・」

誓うように胸に手を当てて、階段を降りていった。