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ダーク・ファンタジー小説
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.214 )
- 日時: 2013/07/16 12:42
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: T3UB3n3H)
第四十八話 何で
町が燃える。
辺りを見回しても、赤、赤、赤。
いや、紅、と言ったほうが正しいのだろう。
『何で・・・』
呆然と立ち尽くし、目の前の状況が飲み込めないでいる。
何で?
誰が?
どうして?
一体・・・。
何が起こった?
『僕は、母様のお使いで、隣の町へ行っていて、それで・・帰ってきたら・・・?』
帰ってきたら。
『みんな真っ赤で・・?』
頭をかきむしる。
鼓動が早い。
息が苦しい。
空気が熱い。
『何で何で何で何で何で何で何で何で』
狂ったようにつぶやく。
『母様も、父様も、みんなみんなみんな・・!』
ジワリと涙が、今になって浮かぶ。
『真っ赤で、血まみれで・・。血が沢山出てて・・・っっ』
ぽたぽたと涙がこぼれる。
新鮮に思い出されるのは、真っ赤な死体。
両親も、仲が良かった友達も、可愛いと思っていた女の子も、優しかった近所の人たちも、皆同じように真っ赤に染まっている。
『う・・・オェッ・・・』
口に手を当てるが、こらえられずに吐き出した。
ゲホッと咳き込みながら、胃の中を空っぽにする。
それでもまだ気持ち悪い。
涙が止まらない。
『何で・・こんなに・・紅いんだよぉ・・・』
涙声でつぶやいた。
『綺麗だね』
耳に届いたのは、可愛らしい少女の声。
ゆっくりと顔を上げる。
一瞬、幻覚が見えた。
燃え盛る炎は、周りを覆う赤いカーテン。
死体と血は、辺りに散らばる人形と薔薇の花弁。
そう、思えた。
そう思えるほど、少女の纏う雰囲気は、特別だった。
『ねぇ』
微笑んだまま、少女は近づいてくる。
『どうして』
フワリと香るのは、甘い匂い。
彼女にピッタリだと思った。
『君は生きてるの?』
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