ダーク・ファンタジー小説

Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.239 )
日時: 2013/08/26 12:53
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: T3UB3n3H)

第五十七話 協力


ふぅ、と女性が息を吐いた。
ため息が混じっている。

「どうしましょう…」

頬に手を当てて考える。

爆発音が聞こえた瞬間、凪と朽葉の視界から消えることに成功した。
そして、外に飛び出して高い木の枝に座っている。
暫らく見ていると、煙の中から数人の男女が出てくる。
どの顔も資料で見たことがある。
三人の博士、そのうちの一人。
新羅幽。
彼がここにいるという事実が、女性を悩ませる原因だ。
博士としての称号を捨てて、一人でどこかへ姿を消したと、資料にはまとめてあった。
その博士が今、目の前にいる。

彼女が命令されたのは遥と彩女の二人の動向を探ること。
しかし、ずっと昔。
彼女が“彼”の兵器となった時に命令されていることがあった。

『新羅幽を見つけたら、殺さずに連れてくること』

何故連れて行くのか理由は分からない。
しかし、理由などは関係ないので、その言葉を命令としてインプットしてある。

「あの博士は連れて行く。でも二人の動向を探る…」

幽を連れて行くことは容易いだろう。
しかし、今回の命令、二人の動向を探ることは幽を連れて行ったら遂行できなくなる。
どちらを最優先に考えるべきか考えているのだ。
そして、どうすればどちらも遂行できるかも。

「…」

扇を開いては閉じ、開いては閉じ…。
それを何度か繰り返す。

「…何者ですか?」

うなじにつめたいものが押し当てられる。
刀だろう。
振り向くことなく、女性は言葉を続ける。

「あたしはとあるお方からの命令を受けております。あたしを壊せば面倒くさいことになりますよ…?」
「分かっています。あなたを壊す気はありません。ただ、大人しくしていただきたいのですよ」

にこり、と相手が笑う。
顔は見えないが、気配で分かる。

「何故でしょうか?」

扇を広げて口元を隠す。

「あなたの主と、我が主の望むものは似ているのです」

ふっ、と刀が下げられる。
改めて、女性は相手に向き直る。

ストレートの黒髪を風に遊ばせて、相手は紅色の瞳を和らげた。

「協力しませんか?」