ダーク・ファンタジー小説
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.79 )
- 日時: 2012/10/04 21:59
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: AKehFwYl)
第三十話 初めての日
気づけば私の回りには彼らがいた
別々の境遇だったけど同じ場所にいた
見えない
聞こえない
喋れない
彼らはそんなリスクを背負っていた
私は体じゃなかった
人間不信
親から虐待を受け、捨てられた
そして拾われたらここにいた
既にここには“喋れない”子がいた
私と“喋れない”子はただ同じ空間にいただけだった
白衣を着た大人が食事を運んできてけど、反対方向を向いて食べていた
暫らくして“見えない”子が来た
私たちより幼い容姿だったその子は、自分の布団の中から動かなかった
私も“喋れない”子も特に関心を示さなかった
どうでも良かった
次に“聞こえない”子が来た
女の子だったから、少し興味はあった
その子は笑顔だったけど、本心は笑っていないってことが分かった
私たち4人は同じ空間を、場所を、時間を過ごした
あの人が来るまで私たちはお互いを認めていなかった
『初めまして』
綺麗な笑顔をこちらに向けるあの人は清らかだった
初めて私が信じた人だった
『私はここの最高責任者です』
難しい言葉だったから理解できなかった
だけど偉い人というのは分かった
『貴方たちをここに連れてきたのは私です。それには理由があります』
そういって理由を聞かされた
正直に言うと、「あぁそれだけか」というものだった
私にとっては、だが
他の子、特に“見えない”子は激しく抗議した
その時初めてその子の声を聞いた
『何で!何で、僕が!』
何もうつさないはずの黒い瞳から涙がこぼれていた
私が散々こぼしたものだった
『・・・貴方たちは選ばれたのです』
強い意志を持つ瞳の輝きに私は胸が高まるのを感じた
『勝手に連れてきて、今まで放っておいた事はすみません。責めてもかまいません。殴っても構いません』
そんな風に言われると、殴ることもののしることも出来なくなった
“見えない”子もあきらめたのか座りこんだ
『ただ』
顔を伏せていた全員があの人を見た
『今説明したとおり、貴方たちが必要なんです。貴方たちが選ばれたんです。貴方たちを信じたいのです』
悲痛な声でそういうあの人の言葉に、私の瞳に光が戻ったきがした
“見えない”子が初めて布団をのけた
“喋れない”子が初めて表情を変えた
“聞こえない”子が初めて本心からの表情を作った
『勝手なお願いです。私の、私たちの傲慢です』
けれど、これで世界が変わると信じているから・・・
だから
『私は凛』
『僕は風』
『私は静』
『[俺は灯]』
その日、私たちは初めてお互いに言葉を交わし、名前を知った