ダーク・ファンタジー小説
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.92 )
- 日時: 2012/10/08 22:22
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: AKehFwYl)
第三十五話 “外”
「・・私は母に捨てられ、千年樹のところで息絶えかけた。そこを救ってもらった」
「誰に?」
手李拏が眉をひそめながら尋ねる
「博士・・・だったな」
「博士?」
あぁ、と凪はうなづいた
「名前は教えてもらっていない。ただ、その博士たちがいたから今の私はいる」
「そっか。じゃあ命の恩人なんだな」
ニッと笑う手李拏
凪はフッと笑う
「千年樹の元で倒れた私は気づいたら博士たちの研究所にいて、救われたことを知った。そこで私は生活に必要な知恵を学んだ」
「へぇー・・」
「・・・だけど私は忘れていない」
グッと片方の拳を握った
「私を捨てた母のことを」
手李拏は気まずそうに目をそらす
「私は博士たちに礼を言ってその研究所から離れた。自分の村へと戻った」
そしたら、と凪は薄く笑う
「私の父がいたのよ」
「!死んだんじゃなかったのかよ?」
「そう。死んだと聞かされていたけど生きていたの」
クッと喉の奥で凪は笑う
こんな風に笑う凪は初めてな手李拏は背筋が寒くなるのを感じた
「家で私の母と父は仲良く二人で暮らしている。どうして?しかも楽しそうに笑っていて」
凪は唇をかんだ
「私を捨てたくせに笑っている最低な親なんてうじ虫以下の存在よ・・・憎くて憎くて・・・殺してやろうと思った」
「・・・」
でも、と落ち着きを取り戻した声で言った
「せっかくだから絶望のふちに立たしてから、殺してやろうと思ったの」
「絶望?」
「そう・・・」
そういって凪の冷たい目が手李拏を射抜く
「自分の捨てた娘が、“人間兵器”となって帰ってきたらどう?怖くない?恐ろしくはない?・・・・・そして思い知るがいい」
ボコボコッと何かが音を立てる
ハッとして自分の手の中のコップを見ると、中の液体が波打っている
凪のミルクも同じように
「“人間兵器”はまだ計画途中で一般には明かされていなかった。だけど私は博士たちに拾われたからね。そこで知ったわ。だから戻った。けれど拒否された・・・」
「・・じゃあ」
「あきらめかけた時、魔女の噂を聞いた」
「魔女?」
「そう。魔神彩女の噂を」
フッと凪は笑った
「噂をたどると、ちょうど魔神と会った。しかも子供を担いでいてね」
「え?子供?」
「・・・まぁね。でも、その時確かに私はその女が魔女だと知った。私と同じ年くらいだったけど、確かに魔女だと感じ取った」
「私は魔神に尋ねたわ。『私を人間兵器にできるか』って」
「・・それで?」
ゴクリと生唾を飲み込んだ
「『計画初段階でいいなら』魔神は言った。それでもいいと告げると嬉しそうに魔神は了承をした」
私と魔神とはお互いに利害が一致していたしね、と肩をすくめた
「そして私は、本家研究グループ以外で初の人間兵器となった」
そういって髪をかきあげた
あらわになったうなじ
その部分に刻まれた“005”の数字
「私は№005 記念すべき“外”で初めての人間兵器よ」
スッと細められた瞳が怪しく輝いた