ダーク・ファンタジー小説

Re: ウェルト戦記 ( No.4 )
日時: 2013/08/25 01:13
名前: ヒント (ID: QShSD58R)

第二話 後編

 かなり長く雑談をしていたせいで、料理はすっかり冷めてしまっていた。しかし、再び始まった雑談を交わしながらの食事はアルザにとって、かなり美味しく感じられた。

 「賑やかなんだな」
トレイに載っていた料理を全て平らげ、隣に座っているルースに話しかける。
「これでも半数だがな。全員いたらもっと騒がしい」
「これよりも騒がしいって……、どんだけ何だ?」
「しかも、一番うるさいのが帰ってきてない」
「……すごいな」

 「それじゃ、私は先に休む。明日から早速仕事だからお前も今日は早めに休んでおけ。朝十時にエントランス集合だ」
「了解」
「それと、寮とシャワールームは四階だ。荷物は部屋に届いているらしい」
「分かった。ありがとう」
「言っておくべきことはこのくらいかな。お休み」
「ああ、お休み」

 ルースがトレイを持って席から立ち、片付けてから食堂を出る。それに続いてジークベルトも席を立つ。
「タオルはシャワールームに置いてあるので、それを使ってください。寮に一度着替えを取りにいってからシャワーを浴びた方が良いと思いますよ。では、お休みなさい」
そう伝えると、食堂を出た。

 「二人とも行っちゃったね。ところでこれ、いる?」
そう言いながらミラが出したのは、先ほどの毒草疑惑のある花だった。
「……怖いんで、遠慮しときます」
「信用ないなぁ……」

 それじゃお休みなさーい、と言ってミラも出る。

 「シャワー浴びてから寝るか」
アルザも食堂を出て、エレベーターで四階へ向かった。

***

 四階に着いてまず、事務室らしき窓口で部屋の鍵を貰う。部屋にはルースの言った通り、荷物が置いてあった。取り敢えず、着替えだけ取り出してからシャワールームに行く。

 シャワーを浴びて部屋に戻るや否や、ベッドに倒れ込んだ。今までの疲れが一気に押し寄せてきたのだ。

 「家族、か……」
ベッドの中で食堂での会話を思い出し、アルザは一人呟く。だが、食堂での会話の記憶に交じり、別の記憶も浮かび上がる。

 それは、ある人の記憶。かつて、たった一人の家族だった……。

 「……っっ、はあ、はあ」

 −−ダメだ。今は、これ以上思い出したらダメだ。

 呼吸が乱れていることにも気づかず、無理矢理思い出すのを止める。

 「……寝よう」
やがて、記憶が浮かび上がってこなくなり、アルザは寝ることにした。眠れないかと思ったが、疲れのせいか意外とあっさり眠りに落ちた。