ダーク・ファンタジー小説
- Re: -deviant- 異常者たちの物語 ( No.37 )
- 日時: 2013/09/22 12:32
- 名前: エンヴィ ◆3M6zglQ7Wk (ID: Q4WhnRbg)
Chapter 4.
2
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「……いたか」
前方に帰る最中のアスールとクローロンを見つけて、俺は呟いた。
同時に、その2人を後方から伺うどう見ても怪しい黒服の男たちも。
「双子が言ってたのはアイツらか」
「みたいだねー」
シーニーは走るのが遅いため、俺はいったんシーニーを片腕に乗っけるように持ち上げ、そのまま全力で走った。
こういう場合はタッグが軽くて助かる。
やがて、黒服の一人が背後からアスールに、鈍器のような物を振り上げて襲おうとした。直前にどうにかクローロンが気づくが、アスールは驚いて足がすくんでしまったらしく動けない。
(間に合うか……!?)
距離的には少し難しい。
俺はシーニーを担ぐ腕に力を込め、
「行って来い!」
「え、ひっど」
ブンッ!
黒服に向かって投げた。
いやだって軽いし。こういうときに有効活用しなければな。
シーニーは見事に黒服に命中し、黒服の男は不意を突かれて「ぐぁっ!?」とうめいた。
「あいってて〜」
シーニーがワザとらしく言いながら頭をさすって起きあがる。その際、思いっきり男の顔面を踏みつけた。再びうめき声をあげる男。
すると、急に黒服の男たちは全員懐から銃を取り出した。
そしてそれを、そっくり同じ動作で俺とシーニーに突きつける。
代表らしき奴が、話しかけてきた。
「どこの誰かは知らんが……我々の任務を邪魔するようなら、今すぐここで消えてもらうぞ」
悪役のセリフのテンプレートだな、ホント。
俺は何か適当に言い返そうとしたが、その役は後から来た奴にとられた。
「そんなショボい銃で勝てると思っているのかな?この人たちは」
「さぁなー?」
何だ?と振り返る黒服の男たちは、その光景に顔をこわばらせた。
そこには、ロッソが一瞬にして人間の身長の2倍はある、あの巨大マシンガンを造り上げていたからだ。
そして出来上がったとたん、ルージュはそれを片手で持ち上げて、ガション、と肩に担いだ。
うむ、迫力で圧倒するにおいては合格どころじゃないな。
「はっ、馬鹿じゃないのか?そんな馬鹿でかいだけの武器じゃむしろ機敏性が損なわれる!何より、マシンガンなら近距離戦で不利になるのにそんなこともわからないのか、ガキめ!」
負け惜しみのように言う黒服の一人。
まぁ、わざわざ説明する方も馬鹿だが……イカレ具合ならあの双子のほうがまだ上だ。
「近距離戦〜?こうするに決まってンだろ」
ルージュはマシンガンを、そのまんまブン回した。
おかげで避け損ねた一人が一瞬にして潰れた豆腐みたいになった。お気の毒に。
「ア、アーテルさん!シーニー君が……」
背後で焦ったようなアスールの声が聞こえ、振り返る。
アスールとクローロンは戦力外なので避難してもらおうと思っていたが、そのあたりは自分で判断して距離をとってくれたようだった。
問題はシーニーである。
シーニーは、黒服に人質にされていた。首にナイフが突きつけられている。
「は、ははっ!テメェのかわいい弟だぞ、えぇ?傷つけられたくなかったら大人しくしろ!」
ひきつった笑いを浮かべるそいつ。
シーニーの方をもう一度見ると、ませた風に「やれやれ」とでも言いたげな眼差しで返された。……なんだか、いたたまれないな黒服。
とりあえず俺は、そいつに向かって言ってやった。
「あっそ。斬るなりなんなりしたらどうだ?ソイツ、俺の弟じゃねぇし」
「はぁ!?お前、正気か!?おれは本気なんだぞ!」
「だからどうぞご勝手に」
俺のそんな発言を、挑発と受け取ったのか。
男は若干ためらったのもつかの間、シーニーの首をザックリ切った。
——今だ。
ダッ、と俺は一歩で距離を詰めた。
全く情景が読めていないソイツを利用し、俺はシーニーの肩に手を置く。
そして、蘇生が始まってしまう前にもう一方の手で男の肩に触れた。
瞬間。
ザシュッ!
「っ、ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
男の首が、見る見るうちに真っ赤に染まる。男は耳障りな絶叫をあげた。
「……うっせぇな。ガキでさえ何も叫ばなかった程度の傷だぞ」
すると、武器を造った後はのんびり観戦にまわっていたロッソが茶々を入れた。
「しょうがないでしょ、シーニーは普通のガキじゃないんだから」
「それもそうか」
男はその後もまだもだえ苦しむ。たぶん、そもそもシーニーに与えたコイツのダメージが、致死量ではなかったのだろう。
俺は、まだ微妙につながっていた頸動脈を、片手の指をつかって引きちぎった。プチっ、と音がして、男の首がガクンとなる。まぁ、せめてもの最後の情けだと思ってくれ。
先ほどから、俺とシーニーのこのやり取りや、ルージュの好戦ぶりに圧倒されて他の黒服はもう戦意喪失気味だった。
……なんか、前にもあったなこんなこと。いわゆるデジャブって奴か、これは。
悔し紛れに、雑魚っぽい黒服が叫ぶ。
「畜生!異常者の分際で……!」
「じゃぁ今度からは、異常者は異常者と戦わせろってお前の雇い主にでも言うんだな。そもそもなんでこういった仕事に、ノーマルの人間ばっかを使うのかが俺には疑問だ」
「うるさい、ふざけるな!」
……会話の成立は望めなさそうだ。