ダーク・ファンタジー小説
- Re: -deviant- 異常者たちの物語 ( No.70 )
- 日時: 2013/09/28 21:36
- 名前: エンヴィ ◆3M6zglQ7Wk (ID: /TProENM)
Chapter 6.
3
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振り返ると、そこには小柄な人間が立っていた。
少年……だろうか?少女にも見える。
栗色の髪はかなり長く、一つの三つ編みにして下げている上に、前髪も長くて片目はほとんど髪で隠れている。
質素な服を着たその10代後半と思しき人物は、かなり小さい声でボソボソと続けた。
「あの……違いますか」
さっきの質問のことだろう。
俺はソイツに答えた。
「そうだ、モンスターの駆除を依頼されたんだが……お前が代表者か?」
「いえ……町長の代理で見回りに来ました。こちらです、あなたたちで最後の参加者です」
他のディヴィアントたちはもう集まっているということか。
なんだか覇気がないその少年に、とりあえず俺たちはついて行くことにした。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんはなんて名前なの?僕はシーニー、こっちはアーテル!」
早速シーニーが話しかけたが、その瞬間少年はビクッ、と肩を震わせた。
「あ……えっと、ブルーノといいます」
少年……ブルーノは、少し怯えた風に怖々と答えた。
シーニーは「そっか〜」と言ったきり、何か察したのかそれ以上話しかけるのをやめた。
……考えてみれば、俺たちディヴィアントに対してはこういった態度がむしろ一般的なのだ。
ここ最近は、なぜか同族と出会うことが多かったり(あの使え魔とか女科学者とか)、そもそも人間じゃない奴だったり(あの魔導師とかロボットとか)、ノーマルなのに全然気にしない奴だったり(山で爺さんの居候している花飾り女とか)、そういうのばかりだったからつい忘れていた。
ブルーノは、俺たちを集合場所まで案内する役割をたまたま負わせられた、不運な少年といったところだろうか。
必死で平静を保とうとしながら思い切りそれが失敗していて、さっきからビクビクしすぎている。
それでも役割はきちんとこなしているらしく、しばらくすると俺たちの前方に建物が見えてきた。
役所らしきその建物に入り、少年は奥に声をかけた。
「町長、最後の方たちを連れてきました……」
本来は受け付けの人間が一人や二人くらいはいそうなカウンターだが、今はそこには誰も座っていない。
そのカウンターの奥の扉から、初老の男が出てきた。コイツが町長らしい。
「あぁ、よくぞ来てくださいました!さぁ、もう皆さんお集まりです、どうぞこちらに!」
無駄にへりくだった調子でペコペコしながら町長は言い、扉の向こうの部屋を示した。
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扉の向こうは、会議室らしく大きな長机といくつかの椅子が並べられていた。普段はここで町内会議でもするのだろう。
そこに、すでに4人の人物が座ったり、あるいは座っている奴の傍で立って控えていたり、タッグなのか会話をしたりと思い思いに過ごしていた。
そのうちの二人を見て、俺はいつぞやの爺さんの家での驚きがまた蘇った。
「!お前ら、なんで!?」
思わず馬鹿っぽいことを口走った俺だが、驚いたのは相手も同じらしかった。
「貴様ら、なぜここに!?」
驚いてこちらを見る、その女は金髪に紫の瞳をしていた。
アマレロ……じゃない。そいつは、ヴィオーラだった。
そしてもちろん、その隣に座っているのは……あの魔導師。
ヴァイスの方は、微妙に眉をひそめるように動かした気がするが、それ以外の表情は全く変化がなかった。安定の人形顔(ポーカーフェイス)である。
シーニーが心なしか嬉しそうに「あ〜、また会ったね!ヴィオーラお姉ちゃん」と話しかけると、当のヴィオーラはチッ、と舌打ちした。
……いや、せめて年下にくらいは加減してやれよ。
それにしても驚いた。この2人もこの依頼を受けたということか。
何かと俺たちとクエストがかぶるな、こいつら。
驚いた様子の町長が、「おや、知り合いでしたか?」と尋ねてきたので「あぁ、ちょっとな」と適当にあしらい、俺は適当な席に座った。シーニーも当然のように隣を陣取る。
ちなみに、4人のうち俺にとっては初対面の方の2人は、なんだか山賊みたいな風貌の男とずる賢そうな小男だった。なんとなく下卑た雰囲気のする2人組で、新たに入ってきた俺たちを舐めるように見回している。
……あんまり好感は持てないな。
「では、これで全員がお集まりいただけたようなので、改めて依頼についてお話ししたいと思います」
町長が全員の視線が集まりやすいように、部屋の中央に立ってそう宣言した。
ふと部屋の隅を見ると、ブルーノが所在無げにボサッ、と立っている。座りもしなければ立ち去りもしない。この後も何か手伝うのだろうか?
コソコソと話していた山賊と小男は会話をそこでやめ、俺たちがいることに若干不満そうにしていたヴィオーラも大人しく席に着いた。
そして、町長を主催にしたモンスターの討伐作戦会議が展開された。