ダーク・ファンタジー小説
- Re: -deviant- 異常者たちの物語 ( No.71 )
- 日時: 2013/09/29 10:28
- 名前: エンヴィ ◆3M6zglQ7Wk (ID: /TProENM)
Chapter 6.
4
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会議、とはいっても町長があらかじめ決めていた計画の手順を説明されるだけなので、サクサクと進んでいった。
その内容はというと、まずモンスターは決まった時間帯に大勢で町を一斉に襲いにくることがあるらしい。
普段は1体か2体がちらほらと出歩くだけらしいのだが(それでも一般人には危険極まりないので、全員家の中に立てこもっているのだそうだ)、その時間帯になると図ったように奇襲をかけてくる。
その時に、俺たちディヴィアントがそれぞれ左右と前方からその群れを攻撃し、町に極力入らせないようにしつつ討伐……というものだ。
しかし、この作戦には疑問が残る。
俺はそれを尋ねた。
「モンスターの群れを三方向から囲むっていうのは理解できるが……そのモンスターが奇襲をかけてくるのは、町のどこからなのかなんてわからないぞ?」
そう、この町は山同市の間の、谷にあるのだ。当然周りは山か、あるいは荒野である。モンスターにとっては、どこからでも町に入ることはできる。
しかしその質問に、町長は自信たっぷりに言った。
「大丈夫ですよ、我が町には『天才』がいるのです」
そう言って、町長は部屋の隅を示す。
俺を含めた6人全員が、そちらを向いた。
「……え、……あ、どうも……」
ブルーノが戸惑ったように小さく会釈した。
……要するにどういう意味だ。
聞くまでもなく町長が説明する。
「彼……ブルーノは、今回あなた方をモンスターまで導く案内役なのです。彼は、モンスターの生態を把握して、次にモンスターがどの方角からやってくるのかを予測することができるのです!」
誇らしげに言う町長。
対照的に、ブルーノは恐縮しているのか縮こまってしまっている。
……まぁ、なんとなく事情はわかった。
と、俺がとりあえず納得しかけていると、あの山賊のような男が「おい」と声をあげた。
なぜか人が発言するだけでビクッ、と反応するブルーノ。
それにはお構いなしに、山賊男は言った。
「本当にこんなガキが役に立つのか?そもそも、なんなんだこの面子は」
俺やシーニー、ヴァイスとヴィオーラを見回しながらソイツは嫌味たっぷりに言う。
「おれ様以外、戦力にすらならねぇじゃねーか。しかも、2人は女とガキときた。このおれ様が戦うっつうのに、こんな役立たず共とただでさえ少ねぇ報酬を山分けしろ、って言うのか?」
このセリフに何の顔色も変えなかったのは、ヴァイスと、山賊男の連れの小男だけだった。
ヴィオーラは(たぶんヴァイスを侮辱されたことに対してのみ)明らかに堪忍袋がブチ切れ、シーニーは、むっ、とした顔で黙り、ブルーノはもう恐怖のあまり明らかに逃げたそうにし、町長は顔が真っ青だった。
そして俺はというと。
「お前さ。相手の実力も見ないうちから断定するのってかなり恥ずかしいことだって自覚できねぇの?」
とりあえずまぁ、不愉快だったので言ってみた。
ま、少なくともあの魔導師と使え魔の実力ぐらいは見抜けないものかね、プロなら。
すると、山賊男は俺の挑発に乗ったのか、「あんだと?喧嘩売ってンのかこら」と低い声で脅しつけてきた。どこかでよく聞くセリフだ。もうちょっと位オリジナリティを出せなかったのだろうか?
町長とブルーノが完全に恐怖して部屋の隅に逃げたが、山賊男は机を跨いで俺の方へ殴りかかりに来ようとした。
しかし、それを止めた人物がいた。
連れの小男だ。
「まぁまぁ、それくらいにしておきたまえ」
無駄に芝居気のある、気障ったらしい口調で山賊男を止めた。
そして、似合ってもいない撫でつけた髪型の髪を指ですいて、続けた。
「我々はこれから共に共闘するメンバーなのだよ?そう仲間割れを起こす物じゃない、ここはお互いに一歩引いてあげることでどうかな?」
いや、どうかなと言われても。
しかし山賊男は舌打ちをしてとりあえず大人しくなった。
こうして、小男はあたかも大参事を寸止めしたかのように得意げな顔をして、他の周りの人物——とくにヴィオーラを眺めやった。
そのヴィオーラはというと、そんな視線には気づかずにボソボソと、
「あの男……殺す……よくも主を……」
と怨念たっぷりに呟いていた。……女の忠誠心って恐ろしい。
その『主』ことヴァイスは、何事もなかったかのように涼しげな顔で町長に短く尋ねた。
「終わりか」
「え?」
町長がキョトンとして聞き返すと、ヴァイスは言いなおした。
「会議。終わりなら帰る」
「あ、……はい、お疲れ様です!ええと本日の夜、日が沈んだら決行の予定なので、その際にまたここへお集まりいただければ……」
「わかった」
ガタ、と椅子から立ち上がり、ヴァイスは無言で部屋を出ていく。当然、ヴィオーラもその後を影のように付き従って出て行った。
なんだかなぁ。
これ、絶対に問題が起こる前兆じゃないか。