ダーク・ファンタジー小説
- Re: STRONG! ( No.1 )
- 日時: 2013/09/15 16:25
- 名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)
「このおくすりを・・・・、のんだら・・・・・・・・、わたしは・・・・・、おうちに・・、かえれるの?」
つぶらな瞳と長い黒髪を持った7歳程度の少女が、医療用ベッドに横たわりながら隣にいる母親に話しかけている。その姿は今にも儚く散ってしまいそうなほどにもろく、やせ細っていた。
そんな今の彼女に何かしてあげられることはないだろうかと、この母親が強く懇願したが故の産物が大手医療用薬メーカーのレリーフ製薬が独自開発した不死の薬というわけである。最初はもう残り一ヶ月と医師から余命宣告を受けていた少女に、救済者というに相応しい薬が舞い込んできたのだ。医師からの提案であったものの、不安もあった。
本当に大丈夫なのだろうかと。
この懸念は成功を確認するまで晴れない。が、残された選択肢もこれしかない。
母親は彼女にそっと語りかけ、安心させようと持てる限りの笑顔を彼女に向ける。
「そうよアカネ。これさえ飲めばあなたの病気なんてすぐふっとんじゃうんだから、心配しないで」
自分に言い聞かせるように彼女に対して母親は言う。
「・・うん・・」と彼女も笑顔を向け頷いてくれる。
それだけでほっとできた、もう助かってくれればそれでいい。
彼女は医療用ベッドから必死の思いで起き上がり、横に配置されている小さい机から赤と白の半々の色で分かれたカプセル状の薬を服用する。
同時に紙コップに入った水を飲み、一息ついた。
彼女の右手にはまだまだ残っている紙コップに入った水があり、それを母親に手渡すと同時に確認を取る。
「これで・・・・、いいの?」
まだ弱々しい声にすこしばかり顔を俯かせようとするが、もうこの子は大丈夫、助かるンだ、救われたんだと思い、返答する。
「ええ。もう大丈夫。もう大丈夫だから、ね」
直に彼女に憑いていた病魔は浄化され、また一年前のような元気な顔を観られると思うと無性に涙が出てくる。苦しまなくていいと言ってあげたかったが、嗚咽で出したい言葉も出ない。
「・・・・・・よかった。・・・・・・・・・・・・おかあさん、やっと・・・・・・・、わらったね」
「え?」
「だって・・・・・、おかあさん・・、いっつも・・・・・・・、わらいながら・・・・・・・・・、かなしそうに・・・・、してたから・・・・・・・」
彼女は笑いながらそんなことを言った。彼女にとっての心配すべき相手が母親だったことに、母親自身もう何も言葉が出ない。
でもできる限りは、と思いながら母親は満面の笑みで返す。
「そんなことないわよ・・、もう、あなたって子は・・」