ダーク・ファンタジー小説
- Re: STRONG! ( No.13 )
- 日時: 2013/09/25 17:58
- 名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)
シュウはベッドから静かに降り、周囲も見渡した。あるものは男物の家具や勉強机、そして大方私物であると思われる見知ったアイドルのポスターと有名なサッカー選手の壁紙。いかにもモダンな青春真っ只中の男子といった感じの一室である。
「これが、俺の部屋」
そうシュウは考え付く。この家庭内において、性別が男なのはシュウただ一人である。
「もーっ!!シュウったら!はやく来なさいよ!!」
今シュウが居るのは二階であるのだろう。下の一階からから猛獣の雄たけびの様に変わったハル姉の甲高い声が響く。
「ハル姉・・・・・・・・・・・・・・」
あの時まで、あの薬をシュウが飲むまで、ハル姉の持ち前の明るさは塵ほども感じられなかった。だが、今この激しい声が聞こえているということは、それ相応の改善がシュウの体に見られたか、もしくは。
「俺は、死んで・・」
実際のところ、シュウはあの薬に対して違和感を拭い切れてはいなかったし、交通事故で陥ってしまったシュウの症状は余りにも重く、下半身不全や、麻痺、全身複雑骨折、不死の薬を飲む幾日か前には五体の内右腕、右足が壊死、切断することでしか延命することが出来ない状況となってしまっていた。
幾ら最後の希望ですという風に医者に進言されても、流石にそれを飲んだとて今の状況が改善に向かうはずが無いと考えていた。渡されたときは毒物を飲ませて、安楽死させてしまおうという医者達の魂胆かと思ったほどである。
だが、そんな最悪な症状からでも、あの不死の薬というのは本当に効果を発揮したのだろうか?
もう自分自身は死んでしまっていて、今シュウが居るのは夢の世界という悲惨な結末を辿ってはいやしないだろうか?
「こんな回復なんて、本当に可能なのか?あの最悪な症状から鑑みても、今みたいに体を動かすことなんて絶対・・・・・・・・、やっぱりこれは、夢、なのか?」
シュウはそう言うと、自分の健全になった両手を自らの両頬に運ぶ。
夢なんぞの確認には、簡単な作業をすればいい。日本の伝統というに相応しい夢か否かを判別する方法がある。
ズバリ、頬をつねってみよう。