ダーク・ファンタジー小説

Re: STRONG! ( No.16 )
日時: 2013/09/29 15:36
名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)

strong16

シュウは自分の両頬を両手でぎゅっとつまんで、左右に強めにぐにーっと引っ張る。こういう現実味が無い時には、まずつねってみなければ何もわからないと、昔ハル姉に豆知識の様に教えられたことがある。


が。



「……夢、じゃない」



幾らつねっても叩いても覚めようとはしない、どうしようもない程に正しすぎるこの現実は、何故かシュウには不気味にすら感じられた。
あの薬によって、治らない筈の傷も、痛みも、病も全てが跡形もなく浄化されたなんていうのは得心がいかない。納得なんて出来ない。
ハル姉の青春を台無しにさせてしまったあの頑張る姿をこんな物で、差し引き0にできる訳がない。
否、許さない。




「きっと何かがある、俺の知らない、「真実」が」




そうシュウは心に決め、自室のドアノブに手をかけながら言った。ドアノブの冷んやりとした扉がまるで自分の今現在の心境を物語っている様な感じにさせる。
開けてはならない、一寸先は闇のパンドラの箱であるとわかっていながら、シュウは力強くその扉を開け放ち、思う。










もう後戻りはならないと。