ダーク・ファンタジー小説

Re: STRONG! ( No.21 )
日時: 2013/10/06 10:03
名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)

西暦2020年
12月22日

午後8時23分34秒。





「これより、作戦θを開始する。先程の確認の通り実力偏差第78位、能力名《SD》を標的と固定。副標的は彼の側近とされる実力偏差第999位、能力名《鑑定》を固定し、標的は抹殺、副標的は捕獲を最優先とする。以上。全員、持ち場はわかっているわね?」


至極簡単な確認作業。ここで時間をとるわけにはいかない。
一団を支えるリーダーの心境が焦り気味だったとは露知らず、戦闘員兼会計の金髪碧眼の少女は緊張とは疎遠といった風な雰囲気で確認に返答する。


「ハイな。ウチが相手陣地に宣戦布告並びに囮として出撃して、後はシュウっちにバトンタッチでウチの役目は終わりかにゃ?」


年は中学生か高校生の間といったところか、まだ他のメンバーよりかは幼さが残る少女が猫のような表情をしながら受け答えた。それにリーダーと思われる黒髪の少女が少々不満げで心配げな言葉を投げかける。


「ええ。概ね合ってるけど、あなたの役割は相手陣地を混乱させることも含まれているんだからしっかりね、リン」


再度確認。この少女のスペックにはかなりのものが備わっていることは知っているものの、リンと呼ばれた少女が繰り出す天真爛漫さにはリーダーである少女を含め他メンバーも少しばかり業を煮やすことがある。


「りょーかいっ!わかってるって!ウチの能力でピヨらせればいいんしょ?楽勝楽勝、万事問題ないって!」


ピヨらせるという表現が少女の口から出る時点で不安を隠すことなど出来ないが、リンはこれはこれで至って真面目に返答しているのだとリーダーの少女は自分に言い聞かせ、その場の体裁をとろうとする。



「ならいいのだけれど。・・シュウ、あなたはどう動くの」


はあ、とため息をついた後、隣にいる唯一の男子に目を向ける。
クセのある茶髪の少年はリーダーである少女の名前を口にしながら淡々と喋る。
はぁ、と彼もため息をついた後に。



「レイさん・・、なんか僕に丸投げな感じもするんですが・・・・。まぁ一応、リンさんの《拡散》が終わったら、僕の《unknown》で敵陣地を破壊、彼らを・・。《SD》、もしくは《鑑定》を「ステージ」に引き摺り下ろします」



心意気を決めたという感じで少年は受け答える。
対してレイと呼ばれた少女は確認という形ではなく、この少年に足りない最も致命的な弱点を相手に曝け出さないための命令で言う。


「ン、そう。そうね、そんな感じだわ」



けれど、とレイは続ける。



「いいことシュウ。思い上がって自分一人で突っ走っては駄目よ。あなたの能力はすばらしいけれど、相応のリスクがある。そのことをしっかりと肝に銘じておきなさい」


「っ、はい!わ、わかってますっ!!」


「良い返事よ。じゃあ、最後にセナ。シュウの仕事が終わったら、後はお願いね」


「了解」


最後に冷ややかな声でセナと呼ばれた最年少と思われる少女が簡潔に答える。
最後の抹殺並びに捕獲という仕上げをする人物の声色に一安心したのか、レイはその場を仕切るリーダーとしての役割をしっかりと果たす。


「ン。それじゃみんな、作戦会議も終わったことだし、行くわよ」



物語の核、《マザーボード》として。






「これより、戦闘を開始します」