ダーク・ファンタジー小説
- Re: STRONG! ( No.32 )
- 日時: 2013/10/27 19:04
- 名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)
平等院は不意にシュウのいる方に両手を開いて翳す。先程とは相反する動作から、平等院は高らかに言い放った。
「シグマ!」
その途端に平等院の手に森羅万象のエネルギーが集約される。分散されていたリンの加速エネルギー然り、最初の一手であったセナからの射撃エネルギー諸々が青白いヒカリを帯びて平等院の手に集約されていくのがわかる。
この時点でシュウは妨害すべきだった。そうしていれば、もしかしたら平等院という能力者は決して勝てない相手ではなかったのかもしれない。
だが時既に遅しというが如く、平等院は全てを集約し掌握する。
実力偏差の違いを《マザーボード》に見せ付けるために。
平等院の周りに青い光が完全になくなると、彼は自分の右腕ををサイドに振り払いながら、握り締める。掌握の合図と共に
シュウの懐に瞬間移動する平等院の姿を、セナはビル内の遠目から見た。
シュウが気づいたときには、もう右腕は接近している。
平等院の地殻変動並みの威力を秘めた右腕のアッパーが、シュウの鳩尾に炸裂した。
「がはッ!!?」
おかしい。
先ほどの平等院の拳とは段違いの力が掛かる。シュウの骨肉は平等院の拳が鳩尾を強打したことにより抉れ、バキッ!という奇妙な音を出しながらシュウの骨がけたたましい悲鳴を上げる。
声にならない激痛が、シュウを襲った。
「—————————————————ッ!!!?」
肋骨はやられただろうか、自らの肺に肋骨が幾つか刺さっているのがわかる。心臓も辛うじて鼓動を止めないが、時間の問題。まだ立つことは出来るが、先ほどの拳の強打は体全体に影響を与えたらしく、腕にも足にも力が入らない。否、動けない。このままでは殺されると、シュウは平等院との距離を確認して思う。
(なんなんだコイツ!?さっきとは全然勝手が違うじゃないか!!)
◆
「オイオイ、もうちっとは楽しませてくれると思ったんだがな、見当違いだったか。ただオメェの能力が俺の能力で掴めなかったのは、オメェがただの一般人だったからなのか?ソイツはちげぇだろ、早く能力を発動しろってんだ」
(どういうことだオイ?俺はビル群が丸ごと吹っ飛ぶ拳を叩きつけたんだぞ?なんであれだけで済んでんだ、冗談じゃねぇ。怪物かよ)
平等院は脳内でそう考えていた。本来彼の《集約》の拳は建物や戦場をそのまま叩き壊すための能力の一部《集約》であるはずなのに、人間一人さえ殺すことが出来ていない。
この少年は異常だと、平等院の本能が伝えてくる。
「・・うるせぇな、ガキにそんなこと言われたくはねぇよ。第一俺の能力は、正当防衛なんだよ」