ダーク・ファンタジー小説
- Re: STRONG! ( No.33 )
- 日時: 2013/11/04 13:07
- 名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)
「ああ?正当防衛とか、何言ってやがんだ」
平等院は不思議に思う。
この少年が《正当防衛》という能力名ではないのは平等院はよく知っていた。風の噂で《マザーボード》のグループに能力者に絶対の耐性、能力無効の能力を持った少年が入ったというのは聞いていたが、《正当防衛》なんていう能力者がいるというのは初めて耳にした。
シュウが平等院の顔面を殴った時だってしっかりと回りに《分散》を発動させていたし、通常の能力者であれば踏み越えることさえ出来ない不可侵の壁のはずであったのだ。
だが、この手前にいる少年はそんな常識を果てしなく無視する。あの時、一種のバリアを張っていた平等院を殴ることができたのだから、この少年の能力が《正当防衛》であるはずがないと平等院は過信していた。
(ああ、だがあれだな。《鑑定》様に聞いた能力を使うときに一定条件を満たしていないと発動さえすることもできない能力があるってのは、このチャラ男のことだったのか)
平等院はそう思考する。オマケとでもいうように、腹を押さえているシュウがうめき声にも似た声をだした。
「だから正当防衛、それが俺の能力の本質らしい。相手からの攻撃を受けたときだけ、発動する能力条件《正当防衛》だ」
「はっ、噂には聞いていたが能力制約ってトコか?笑えるなぁ、オイ!雑魚過ぎて雑魚過ぎて、そんなんでよく《マザーボード》の奴隷をやれるな?」
「うるせぇ。《マザーボード》はそんな人間じゃないし、俺らのことを奴隷とも思ってないよ。たぶん。・・んなことはいいんだ、ガキ。さっきはよく一発かましてくれたじゃねぇか。
その借り、今返してやるよ」
シュウは自分の右拳を硬く握りしめる。そしてただ前にいるだけの敵を見据え、歩み始めた。
「ああ?御託ならべてねぇで、さっさと来い。それとも、テメェさっきので終いか?」
威力を砕くのが平等院の“能力”であるのならば、シュウのそれはその打破。
「なわけないだろ二桁。こっちはもう“限界”なんだよ。だからとっととこの借りってのを、受け取りなッ!!」
シュウの戦闘能力は今まで培ってきた相手との経験がベースとなる。例えば100振り分けれるエネルギーポイントがあるとすると、その全てを一瞬だけでもいい自分の右拳にだけ集中させれば、シュウという少年の破壊力は実力偏差一桁にも引きを取らない。
桁数が変わると天と地程のパワー的な偏差がある。三桁は常人並みの拳を、二桁はビルを割る拳を、一桁は大地を割る拳を。だがしかし、超えられない壁も存在する。
三桁はいくら情報量を大量に抱えてていても、一桁には絶対に勝てない。情報量の多寡で勝てるのは、一桁間だけ。三桁が勝てるのは最高でも二桁まで、二桁が勝てるのは可能性があったとして一桁まで。こんな常套句が存在するが、シュウは当てはまらない、なぜなら。
そのつまらない日常を打破するために存在する人間であるから、である。
直後、平等院という一個人に向かって。
天災級の拳が吹き荒れた。