ダーク・ファンタジー小説
- Re: STRONG! ( No.39 )
- 日時: 2013/11/23 20:52
- 名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)
「あーあ、汚れちゃったよ」
彼は自身の血塗れた手を見つめながら不敵な笑みを浮かべて言う。
彼の目下には頭部を潰され、首なしデュラハンとなった車掌の体が一つ。
車掌の首元からは途方もない量の血が流れ出てているが、全てが線路の枕木の下の砂利の隙間へと吸い込まれていく。
「ま、後片付けする時に血まみれになるから、あんまり関係ないんだけど、ねっ!」
最後を言い終わるより早く実力偏差第五位の彼は、地が未だに流れ出している首なしの死体を右肩に担ぎ上げ、その場から火急速やかに立ち去る為に、足に幾ばくかの力を入れ、《飛翔》する。
彼が足を踏み込むだけで、離陸地点の線路と砂利はあらぬ方向へ吹き飛ばされるが、逆に彼の体は天高く浮上し、隣の超高層ビルに向かって一気に飛び上がった。
「いっ、いやっほおおおおぉぉぉおおい!!!」
車掌による大量の血が、後方へと放物線を描くように垂れていく。
雨の様にただ一筋の赤い線となったそれは、月明かりに薄気味悪く照らされながら、彼が飛翔しているルートの真下に落ちていく。
山手線での騒動を聞きつけ、線路付近に屯っていた一般人目掛けて。
◆
男同士寂しく馬場の町を歩いていた二人組みの大学生のうちの一人が、携帯に目を落としながら運ぶ足を徐々に休めていた。
彼はそれを気にかけ、話しかける。
「おい、どうしたんだよ」
「山手線で車両大破の可能性だってさ」
彼は青年の言ってる意味がわからず、首をかしげる。冗談半分で言ってるのではないかと半信半疑ながらも、彼は青年の話を聞こうとする。
「どこで?」
「確か、馬場と目白の間って話だけど」
「馬場と目白って、この辺じゃん」
彼は周囲に目をやった。だが、生憎それ相応の爆音や悲鳴やらがちっとも聞こえない。
脅かすなよ、と言おうとした瞬間。
降るはずも無いどす黒い液体が、彼の額へとポッと落ち、涙のように彼のあごに向かって垂れていった。