ダーク・ファンタジー小説
- Re: ありきたりな少女とロボのお話 ( No.2 )
- 日時: 2013/09/23 20:16
- 名前: バンビ ◆roN69p6/aA (ID: b9.2unG6)
<第一章>
少女、サナの住む国ではもうロボットは製造されていないし、ロボットを製造することは法律に反する。国中のロボットは50年前に全部解体され、鉄屑となっていったはず。サナのような若い者は一生ロボットを見ることはないはずだと、学校の先生に教わった。
それなのに何故、目の前にロボットがいるんだろうか。しかもどこかで見たことがあるような気がしてならない。
半球の頭、円柱の胴に「352648 」の番号、長い腕と足の先についた鋭い爪のようなもの。姿形はおぞましいがそれに似合わず顔はニコニコしたものであった。
触るのは怖いから、勇気を振り絞って声をかけてみる。このロボットは音声に反応するだろうか。
「………えと、あの………」
「ア、油ヲ………」
目が赤色に点滅し、何かを探し求めているかのように長い手足を動かす。油が欲しいのだろうか。顔は笑っているのに、なんだかとても苦しそうに見えた。しかし今サナは油をもっていない。
どうすれば………とオロオロしていると、ロボットの方から声をかけてきた。
「雨、降ル。ソコノ洞窟に行コウ。」
ロボットはサナから見て左の方を指した。
サナはロボットを起こし、一緒に洞窟まで歩いていった。洞窟の中はそんなに広くはないが、サナとロボットが入るには充分だった。
「アリガトウ。助カッタ」
「どういたしまして」
「モウチョットデ仲間ガ来ル」
「……え」
このロボットと同じようなものがまだいるのか。サナは不安になったが、その不安はすぐにかきけされた。
鳥の声がする。どうやらさっきの小動物のようだ。
動物達が一斉に洞窟の中に入って来る。びっくりしたサナに見向きもしないでロボットの方へ駆け寄っていく。どうやらこのロボットと動物達の間には強い絆があるようだ。
さっきは見れなかったが、動物達は植物を持ってきていたようだ。動物達はそれを上手にロボットの上で絞っている。あれが油の代わりなのか。
ロボットの表情はずっとと変わらない笑顔だが、さっきよりはずっと楽そうだ。
「キミノ名前ハ?」
ロボットが名前を聞いてきた。サナはぎょっとした。ロボットでも名前、聞くんだ……。そう思いながら自分の名前を告げる。
「ボクハ359648号。元戦闘ロボットデス」
- Re: ありきたりな少女とロボのお話 ( No.3 )
- 日時: 2013/09/25 21:51
- 名前: バンビ ◆roN69p6/aA (ID: b9.2unG6)
戦闘ロボット……このロボットを見たことがあると思ったのは教科書で見たからか。
百年前、このフート国は隣のツカナ国と戦争をしていた。
もともと、この二国は仲が悪く、百年よりももっと前から争っていたのだ。先生は原因が貿易がどうのこうのいってたっけ。
長年の争いにより、両国の人口は年々減少し、人間の兵士は使うのが難しくなってきた。そこで造られたのがこの 359648号──長いのでヨンハチと呼ばせてもらうことにした──と同じ戦闘ロボットだ。
あれからヨンハチは色んなことを話してくれた。
まず、戦闘ロボットに心があったこと。心のない機械的な殺傷より、殺意や憎しみがこもった殺傷の方が敵国のロボットをより早く、より残酷に殺すことができる。そう上の人が考えたらしい。
最初はヨンハチのような優しさを持ったロボットもたくさんいた。みんな、戦争に自分が使われるのが嫌だと言っていた。しかし厳しい訓練や、上の人の洗脳により、次第にヨンハチの仲間は敵を殺すことしか考えない兵器と化した。 それでもヨンハチは優しい心を持ち続けた。どれだけ上の人から洗脳を受けようが、仲間が兵器と化そうが、これだけは大事にしたいと、必死に守った。
優しい心を持った兵器など、上の人からしたらただの不良品ロボットにすぎない。当然壊されそうになった。しかしヨンハチはこれまで訓練してきたことを使い、必死にここまで逃げてきた。逃げるまでの間、たくさんの人も殺した。ヨンハチはその時の罪悪感が百年たった今でも残っているという。