ダーク・ファンタジー小説

Re: 【1/9更新】あなたの故郷はどこでしょう? ( No.7 )
日時: 2014/01/14 15:32
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: ET4BPspr)


「それで、誰が犯人だって言うんだ?」

 控室に戻ってすぐに、団長は舞台の準備をしている団員を全て同じ部屋に呼びよせた。そのように、俺が団長に頼んだからだ。団長の頼みなら仕方が無いと、ぞろぞろと団員たちが集まってくる。
 その間も、絶えずガイは俺の方を睨みつけてきていた。どうせお前が犯人なのだろうと決めつけるような視線だ。
 そんな風に睨みつけられている俺を不安げにルカは眺め続けている。数分経つと、全員が控室に集合した。まずは最初に、団長が口を開いた。

「みなさん、舞台の準備は整いましたか?」
「はい。とりあえず最初のシーンは」
「開演まで後十分、慌てずにいきましょう」

 今日が最終日で、大道具などは初日に組み立てたままほとんどそのまま放っておくので準備はすぐにできたらしい。その分ちょっと雑になってはいるが、演技で何とか誤魔化そうとしている。
 さてそれでは、そう言って団長は話してのバトンを俺に渡した。そう言えば、こんな奴を養っていたなぁと覚えている団員もいれば、誰だろうと首を傾げる者もいる。
 そんな中で、俺は団長からさらにハードルを上げられてしまった。

「名探偵の推理です、どうか聞いてみようではありませんか」

 ちなみに、これはおそらく悪意などなく単純に楽しんでいたらしい。顔がこれ以上なく緩んでいて、笑い声もそれっぽく裏返っている。
 他人事だと思って……。そんな苛立ちは見せずに、俺はその場で語りだした。

「えっと……その前に、四人の方に質問がしたいのですが、よろしいですか?」
「てめえ、時間がかかるような真似してんじゃ……」
「まあまあ、ガイ君。そうやって話の腰を折る方が時間がかかりますよ」
「でも……」

 やはりガイからは突っかかってこられたが、まあ仕方ない。ただし、それをなだめるのは自分の仕事だと、白髪を触りながら団長はガイを説得した。

「では最初に、ガイさんへの質問です。あなたは、一時間前にどこで何をしていましたか?」
「ああ? お前、俺を疑ってんのか?」
「別に」
「役者控えのここで脅迫状片手に悩んでたよ。他の奴らが証人だ」
「分かりました。おそらくそうなのでしょう」
「当たり前だろうが」

 舌打ちをしながら、彼はこちらに詰め寄ってきた。人を犯人扱いするなと喚きながら、俺の胸倉を掴もうと腕を伸ばしたが、他のメンバーから止められる。
 結構血の気の多い性格のようで、このようなことはしょっちゅうらしい。周りの仲間から、いつになったら学習するんだと怒鳴られている。

「では次に、ルカに質問」
「えぇっ、私ですか?」
「出身地はどこだ?」
「えっと……マナ界です」
「分かった」

 何だたったそれだけなのかと、彼女はホッと一息ついた。そもそも、ルカは犯人ではないはずなので、質問内容なんて何でもよかった。犯人に対する質問以外は、本題を誤魔化すための質問になるならば、何でも良かった。

「次に、警備員さん」
「はい」
「先程、アカデミーがどうこうと言っていましたが、どちらのアカデミー出身なのでしょうか?」

 正確には、どの世界でしょうかと、言葉を変えて尋ねてみる。すると、頬を掻きながら警備員さんは弱ったような表情を浮かべた。

「何分田舎出身なもので……。言っても伝わらないと思いますよ」
「良いですから。どんな所かだけでも言ってください」
「かなり田舎ですよ。動力は自然だけ、魔法も能力も科学も進展していない。海が広い世界で、海賊が暴れています」
「カリブとかその辺でしょうか?」
「そ、そうです。えっと……よく知ってますね」

 俺の発言が予想外だったのか、彼は目を見張って驚いた。ただでさえ大きな顔の大きな目なのに、いっそう丸々とデカく見える。
 でも、これでようやく推測だけでなく証拠も提出できるだろう。よっぽどの偶然が起こらない限りは。
 全ての布石を打った後に、俺は団長の方へと向き直った。まだ後一人に訊かなくて良いのかと尋ねたそうな団長だったが、俺はそんな考えを気にせずに、ちょっと笑みを浮かべながらこう言った。

「では最後に、団長への質問です」