ダーク・ファンタジー小説
- Re: アネモネ『チャンネル風ホラー』 ( No.5 )
- 日時: 2014/02/20 07:57
- 名前: 梅雨前線 (ID: gF4d7gY7)
>>6
ギィ…ギィイ…
重々しい何かを引きずる音が 段々近づいてくる。そんな音が聞こえる度に呼吸も荒れ、上手く息が出来なくなり、回る頭も どんどん鈍くなってくるような錯覚が じわりと足元から忍び寄ってくる様だった。
先程掲示板で【草製造機承認】を貰った松島由月は、秋沢要と共に教室の掃除用具入れに隠れていた。
幸い掃除用具はなく、そこそこの大きさだったので高校生としても そこそこ大きめの由月も、女子として大きめの要もギリギリだったが入る事が出来たのである。そして今か今かと さっきまでリアル鬼ごっこしてた原因…テケテケさんが通り過ぎるのを待っていた。
しかし 音は由月達を嘲笑うかの様に ゆっくりと近づくので、由月はすっかり参ってしまってしまい、集中力が切れ、這い寄る恐怖と戦う羽目になってしまった。
要の提案で携帯で連絡を取ろうとしても雑音だけだったり、返ってきたり、書き込めなかったりと全滅。
頼みの綱…諦め半分でチャンネルに繋いだら、繋がるわ他の仲間がレス建てしてるわで2人共余りもの好展開に目を疑った。
一回の書き込みで流石幼馴染と言うべきか、七瀬零が直ぐにコテを付けるように促す。要も気分を紛らわそうと何時も通りに接した結果、何時も通りに流されたので 少しだけ落ち着きを取り戻したようだ。
由月の呼吸も段々落ち着きを纏う。
しかし現状は変わらない。
掲示板では草を生やしてみたりと、なるべく他の仲間達が心配しない様にと振舞ったが…やはり怖いものは怖い。もしも今、隣に仲間が居なかったら…其処まで考えて由月は頭を振るう。
(もしもーーー何て後で考えよう。)
今は脱出方法を考えよう…と自分自身も認める少ない脳で状況情報を纏め出す。
まずは掃除用具入れの上部の隙間からの教室だ。
…明らか何年も掃除したません。と自己主張するかの様に、凡ゆる物に埃が積もり、其処らに穴も空いていた。…零の書き込みに異論したい。流石に俺等の学校も此処まではボロくない。
(…あれ?)
教室をザッとだが見て、何処か違和感が有る様に感じる。しかし再度見ても その原因は分からないので、流す。
(ここは…高校だな、机は見慣れた大きさだし、大学の宣伝ポスター貼ってあったし。…見慣れない大学ばっかりだったけど)
見慣れないのは 唯単に自分が大学に興味が無いからかも知れないが…と付け足して更に追求しながらも携帯を見る。…時刻は16:26と有り得ない数字を表示していた。
(俺らが肝試しを始めたのは夜の7時
なのに…時間が戻った?いや…戻された、のか?)
ここらで雑談を入れると、松島由月は田舎故に娯楽が少ないので、日頃から少しずつだが溜まる鬱憤を、笑う以外に有る事で発散していた。
それはオカルト齧り。
よって結構怖いが、その反面楽しんでも居た。それはオカルト状況下での生き残る最低条件を知っているが故の余裕に他ならない。
聞き見た物を素直に受け止め冷静に状況を見極める事。…これが最低条件で有る。巻き込まれた仲間達も、多少のバラツキさえ有れど充分な柔軟性が有るので、これもまた由月を落ち着ける要素に大きく関わっていた。
(後は、考えたくもないけど…ここが異世界なのか現実なのか。って事か…)
正直異世界だと 詰んでる。
ろくに知識のない高校生4人と犬一匹。更に言えば皆多少なりと家系の事情で霊感が有るので…絶好の餌が霊がウジャウジャの場所に放り込まれた時には直ぐに取り込まれて終了な筈なんだけど…かといっても現実じゃないよな。と堂々巡りが頭の中で繰り広げられて居ると、クイッと服が引っ張られる感触を感じる。
見ると要が 俯いたまま、またクイッと服を引っ張る。肩を軽く叩いても顔を挙げる所か 服を引っ張るのを止めない。
どうやら何かをしてなければ気が紛れないらしい。
(いつもの計画な確信愉快犯はどうやら御留守中の様だな。たっく、こんな状況下でもなければ とっくに笑い出しているこっちの身になれっつーに)
眉を顰めつつも 心を繋ぎとめる行動なら突き離すのも可哀想なので其のままにして置いたままで再度 音に集中する。
(ーーーーーーーーーーーーあれ?)
音ガ…キコエナイ?