ダーク・ファンタジー小説

Re: 銀色に燃えるキャンドル —双眸— ( No.12 )
日時: 2014/03/03 20:11
名前: 環奈 ◆8DJG7S.Zq. (ID: ysgYTWxo)

もう すっかり迷った。

声を頼りに行くはずだったが、その声も聴こえなくなってしまい

「おーい!!助けて〜 助けてやるから!」
なぜか俺も助けを求めていた。

「・・ん?」
俺の目の前に立ちふさがる、ずっしりと重たそうな石を持ち上げて見た。

「—…いよっと!」
向こう側へ押し返すと、人が下敷きにされていた

「———…えっ!おまえ、大丈夫か?!」
不審に俺の方へ顔を上げた

「ありがとう…」
そいつは、男で 背格好は俺と変わらないくらいだ。

「ほらよ」
手を貸してやり、立ち上がらせてやる

「…わ——」
ずっと下敷きだったためか、足がしびれてそいつは揺れた

「大丈夫…か?」
身体が斜めになるのを押しとめて、俺はさっきの石に座らせた。

「身体が、痛い…」
と、背を伸ばしてそいつは石に座ると、俺を向いた

「…助けてくれて、ありがとう。……僕は、大滝星哉…君は?」
顔つきは、俺と同じ日本人みたいな感じで、優しげでのんびりしてそうだ。

「俺は立花翔太!よろしく。」
俺も愛想よく答えると 星哉は笑顔になる

「翔太って呼んでいい?」
勿論、と俺が頷くが、あまりに幼稚で平行線な会話に、ほうと息をつく

「なあ星哉、おまえなんでこんなことになってんだ?」
俺が言いながら 袋から水を取り出した。

「…え?こんなことって?」
と、水を紙コップに分けてやると 大喜びで飲みながら答えた。

「———」
いや、だからおまえはなんで石の下敷きになってんだよ。
俺は愚痴りたいのをやめて 言った

「いや…石の下敷きになってるなんて、フツーじゃないだろ」
俺がそう言うと、星哉はこういった

「んー……。あんまり覚えてないな…でも、星から力を貰っていたから、ここで二日は生きられた」
曖昧な返事に俺は思った

(…前の俺と、なんか一緒)
人間界から来た俺は 遥花に助けてもらい……。

——————もしかしてコイツも、人間界から来たのか?

「おまえ、人間?」
唐突過ぎたかと思ったが、意外にも星哉は、スグに言った

「そうだけど。当たり前だよ・・っ」
…じゃ、コイツ やっぱ人間界から来たんだ。

「そうだな。俺も人間。でもこの場所は人間が住む場所じゃない。ミーティア界って言って、俺たち人間が住む場所の真反対の次元にある場所らしい」

「は?」と、目をぱちくりさせる星哉に、俺は はーっと息をついた

(ダメだ コイツとはしゃべってられない)

「…じゃあ僕、タイムスリップしてきた みたいな」
意外にも早く状況を読みこんだ星哉に、自分の火の力で沸かした水でラーメンを作ってやると、飛びついて食べた

「そんな感じ「これ美味し〜……なんていうの?」
ラーメンも知らねーのコイツ

「…インスタントラーメンってんだ」
真面目に教えてやる

「へえ…。この場所にはそんなものが」
いや、待った待った。これは人間発祥。

「違う、人間が作ったものだ」

「え!」
…だめだ平行線すぎる。


(これも…あの時と一緒)


人間界から来たときの俺の記憶は、おぼろげでほとんどのことを覚えていなかった

ただ、俺は自分の名前や ちょっとした物事の名前を覚えていたくらいで。

(コイツも…)

「…おまえに、どこを行けば楓たちに巡り合えるのか聞いてもどうしようもないよな」


「え?なんか言った?」
優しい笑顔で ズーとラーメンをすする星哉

「いや、なんでもない」

楓たちに巡り合える場所は、星哉に訊いてもほかのだれに訊いてもきっとわからないことである。