ダーク・ファンタジー小説

Re: ・ ・ ・ 魔術シンドローム ・ ・ ・ ( No.3 )
日時: 2014/03/13 21:10
名前: 環奈 ◆8DJG7S.Zq. (ID: ysgYTWxo)

夜明け頃、わたしは起きた。

木漏れ日が差す間もなく、黄昏が来てしまうのにじれったさも感じつつ。
夜明けの景色をみながら、わたしは自分の朝のご飯もなく飢えていた。

「ほら」
梅の花弁はプラムのエサ。
そしてあるのはキャットフードであるレイのエサだけ。

わたしの食事は無い。

数無いお金も レイのエサに使ってしまう。

だから夕飯時から食べていないから、ずっとお腹がすいたまま。
だから お腹がすいているのかすいていないのかもよくわからない。
喉も渇いた

湧き出たオアシスを飲むくらいしか、生きていく道がない

「……命の蝋燭よ」
命の蝋燭を持つ者は、蝋燭に朝晩祈りをささげなくてはならない。
…しなければ

命の蝋燭は倍に増え ずっと生き続けることになる…
わたしはそんなの嫌

普通の魔女や 普通の人間。そんな普通が良いの。
人より倍長い人生なんていやだ

「…我が名は、ビアンカ・ノクターン」

「*オーブ*夜明けの朝の神よ。我が命、残りⅢの行手を阻まぬなかれ。夢を照らす*コスモ*宇宙よ。*ホープ*望みを叶える神よ。*グリーフ*嘆き 物を捨てる者たちよ。 我が祈りに捧げ」

捧げを終えた後、ひといきついていると、背後で 声がした

「…!おまえ!もしや、魔術シンドローム感染者か!!剥奪の刑のためすぐに逮捕する!!」
(!!)
軍隊だった。
銃や刃物 槍という凶器を持つ黒ずくめの軍隊


心臓の鼓動が大きくなる——…。

殺される。

いざ 殺されると思うと怖い。

今の世界は 魔術シンドローム感染者=普通じゃない人をけなし、この世から いや、この歴史からも 無くそうとしている人が多くなって。

この祈りの捧げはもう ほぼ感染者だということの証になっていて、これを見られたんだからもう、魔術シンドローム感染者バレバレだ

「…気を付けてればよかった」
油断のあまりだった。

レイが素早くわたしの前にでて、 プラムも警戒したように、わたしをくるりと囲んで動いた

「!!」
この場所では、魔術シンドロームという症候群感染者は、剥奪されて刑務所で死刑にされてしまう。
わたしは すでに警察に指名手配された追われ人。

見つけたら、三億万グルナ、報酬までついていて。
わたしの名前を言ったら知らない人はいない。 

でも、今回は いつも追われている、警察じゃない。格好とか様子とか 全然違う…誰だろう。

「…やめて…!!プラムとレイだけは——」
わたしは力の限りでグリムワーを使った。
プラムとレイを背後に隠す

この二匹が居なかったら ここまで来れなかった
せめて この二匹だけでも。

グリムワーは魔法のこと。
魔術シンドロームにかかった者に捧げられた神からの力

わたしは、花の力を秘めていて、そばの花の持っている記憶を読むことができたり、植物たちを武器にして戦うこともできる

グリムワーを使い、出てきた植物たちは、軍隊の何人かを、花の蔓で絞り上げる。

でも、こんな能力を使えるのは 魔術シンドローム感染者だけ。
それに体力も使い、燃料切れになると倒れる

これを使う時は、もうばれたときだけ。

「…あなたたち、だれ…?」
わたしは おそるおそる声を上げた

「やめろ!グリムワーを使うな!俺も知らないのか シンドロームハンター、イブキ!「おやめ…!!」
(シンドロームハンター?)
新しく作られたのだろう

逃げ回る シンドローム感染者に手を焼いた警察が——!!

普通の人と違う、不死身の存在 シンドロームを消すために作られたハンターたち。

でも、そんな物凄い莫大な人数の軍隊をかきわけて出てきた少女が居た

わたしよりもすごく豪華な服をきて、わたしよりもステキで、どこかのお嬢様みたいな人だった

「…わたしくは 空軍エアー・フォーツを構えるモルテ界 モルテ塔、王国王女、ビアンカ・コーラル・E公爵あなたは?」
…王女、さまだったんだ。

しかも公爵———!

「…ビアンカ・ノクターン……」
わたしは逃げ腰になって、後ろへじりじりと下がった

(名前がかぶっちゃった…!)

冷や汗が出る

殺される——!!

こんな軍隊とたたかって勝てるわけがない。

「…あら、名前が一緒ですわね。縁がありますわ」
だけど その王女様は、嬉しそうにわたしの手を取った

「でもわたくしビアンカという名前は、大好きですの。あなたは?」
と笑った

「—わたしも 好き…」
油断はだめ。何時攻撃してくるか 解らない

追放されるかと、思った。撃たれるかと、思った。
プラムもレイも 怯えて わたしの背後から顔も出さなくなった

「あら、心配しなくてよ。この軍隊は わたくしの空軍ではありませんもの。わたくしたちはあなたを剥奪する気はないですの。」
え?

その言葉に偽りはないとは思うけれど—…

「サテライトから、貴方方を見守っておりますの。今日も、わたくしが今からこの軍隊を剥奪するんですわ」
と笑った

「え?」
確かに 空軍が地上を歩いているのも・・・

「……この軍隊、さきほど言った通りですわ、シンドロームハンターですの。で わたくしは、シンドローム感染者を保護する、全く敵の存在なのですわよ」
と、高々に笑った。