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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「血相契約」 ( No.1 )
- 日時: 2014/04/04 14:56
- 名前: 黒hana ◆JEhW0nJ.FE (ID: CFE7lDA5)
第一話「契約もどき」
今思えば、自分がくらしている世界はひどく重く、暗く、寂れてしまっているかもしれない。
真っ暗で歩き続けても、その先に道があるのかもわからない。朝がくれば光は一日中夜の闇を隠し、夜になれば光がない真っ暗な道と人々が飢え苦しみながら少しずつ朝の光を待つ。
だから夜は嫌いだ。大嫌いだ。人の本性が見えるから。笑顔のうらにべっとりと張り付いた人の憎しみや好奇心。それを突きつけられるのが怖かったからだ。
自分まで夜の闇に飲み込まれるのが、嫌だった。
昔から夜は嫌いだったし、成長していくとともに大人の「心」を持ってしまったから、人の裏側があふれかえる夜の街を私はいつのまにか毛嫌いしていた。
だからといって私は夜の闇にまぎれる人を否定したりはしない。
一部の大人は夜に溶け込み昼には表せなかった本当の「じぶん」を思う存分味わうことだってしているのだ。人は自分を見失ってしまったら、それこそ本当に黒に飲み込まれてしまうのだから、私は夜の街で生きていく人を軽蔑したりはせず、逆に敬うようにしている。
『人は敬うものに少しでも追いつきたい精神があるもので』
私は夜の街に一歩、つま先だけを溶かして見せた。
幼い私にとって好奇心と尊敬心は自分のなかでの柱なわけで。そんなものに逆らえるわけなかった。だから私は敬うものを無邪気に追いかけた。
「本当」の夜の街を知らずに。
それがいけなかった。
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