ダーク・ファンタジー小説

Re: 「血相契約」 ( No.2 )
日時: 2015/06/24 17:11
名前: 黒hana ◆JEhW0nJ.FE (ID: CFE7lDA5)

第2話


人が行きかう夜の街。
空が真っ黒にそまり、星ひとつ出ない。
聞こえるのは人の騒ぎ声と、夜の声。私はそこを一人で歩く。時折すれ違う人に目配りされるけど、そんな事気にはしない。実際大人たちも本当に心配するなら目配りだけじゃなくて声をかけるはずだ。

私は一人で小さく自嘲した。
ふと上を見上げると空は星が出る隙間なんてないほど真っ黒な雲で覆われていた。どうりで少し肌寒いわけか。私はまた歩をすすめた。私みたいな高校生がこんな夜遅い街を出歩くなんて、街の大人たちからみたら私はきっと異端なんだろう。ここにいてはいけない存在。イレギュラー。でも、やっぱり好奇心には勝てないのだ。だって私はまだ子供だから。夜の街をただ一人で徘徊するどこにでもいるような高校生なのだから。

しかし、大人たちはずるいもので。

私のような高校生が一人で夜の街をふらふらしているなんて、一部のそういう大人たちからみたら大層いいカモなのだろう。

「ねぇねぇお嬢ちゃん。」

厭らしい笑みをつつしみ隠さず露にした男が私に近付いて来た。
私は立ち止まり、チラリと目線だけ男に向ける。男の目は完璧にイっていた。ああ、またか。と一瞬瞼をふせ、ついていないなと心のなかで唱えた。しかし、そんな私の気も知らず、男は私が釣られたかとおもったのか話を続ける。

「この先にお嬢ちゃん達にぴったりのお店が「結構です。」

もうどうでもいいから、さっさとどこかへ行ってほしい。怖いし、気持ち悪い。私だって女の子だ。どこにでもいるようないたって平凡な高校生。それ以前に人なのだから人を嫌がったりするもので。男は一瞬目をあけたがすぐにまた厭らしい笑みを貼り付けて私を説得する。

「そんな事いわずにぃ……ほら、あそこを通ったらすぐだから……ちょっとだけ行ってみない?」

男はニヤニヤとしながらすぐ近くの薄暗い路地裏を指差した。薄暗いとはいってももう夜なので真っ暗といってもいいぐらいなのだが。男は欲求不満なのか。と一瞬で悟った。店があるなんてこともどうせ嘘だろう。路地裏に少女をつれこんでやることなんて決まっている。

「結構ですっもう構わないでください。」

「いいじゃないか〜、ちょっとだけっ。ね?」

何が「ね?」だ。と心の中で毒づいた。もうそろそろ時間も遅くなってきて、人通りもちょくちょく減ってくる。そんなことになったら私は抵抗すらできなくなるだろう。早くこの男を振り払わないと大変なことになる。人が多いうちに助けを求めないと救済処置がなくなってしまうのだから。

「ほらほら、ちょっとだけだからっ。」

そうこう一人で思考の海に沈んでいると男は私の腕をつかみ歩き出していた。男は私の腕を強くつかみ、一切離そうとしない。ギリギリと音が鳴ってしまいそうだ。私はさっきも言ったとおりどこにでもいる女子高校生。力なんてないに等しい。ましてやこの男との力勝負なんてやるだけ無駄なほうだった。

「いやっ!離して!離してったら!!」

必死に手をブンブンと振り、男の拘束から離れようとするのだが、力がかなわない。ならばと思い、周りの人に助けを求めようと周りを見渡した。だがかなしいかな。周りには人っ子一人いず、私と男の二人だけだった。私の思考は一瞬にして絶望という名の闇に飲まれた。そうこうしている間に私は男が指差した暗い路地裏へと連れ込まれてしまった。

ガンッ!

「……っぅ!」

強い音が響き、背中に痛みが走る。
目の前には男。手首も壁に縫い付けられているので抵抗もできない。男は興奮しているのか小さくハァハァと荒い呼吸を繰り返していた。必死にバタバタと暴れてもかなわない。どうすることもできない。これから起こることに頭の中が真っ白になった。

「いやっ……いや……」

目尻に涙がたまり、頬を伝った瞬間だった。
































一瞬の出来事に思えた。