ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「血相契約」〜オリキャラ募集中です!〜 ( No.28 )
- 日時: 2015/06/22 22:26
- 名前: 黒hana ◆JEhW0nJ.FE (ID: CFE7lDA5)
第7話(美紀目線)
真っ黒なコートを羽織った青年、黒夜の爆弾発言から私はまたもや病室で暴れそうになったのでとりあえず冷静になるため、病院の屋上へと足を踏み入れた。普通の患者は入っていけないらしく屋上への扉には南京錠がかけられていたが黒夜がいとも簡単に南京錠を握りつぶしてしまい、難なく屋上へ入ることができた。コイツの握力や行動に突っ込みをいれないと誓った私はなにもいわずに屋上の扉を開けた。扉を開けると、そこは夏色の世界で。夏特有の真っ青な雲ひとつ無い空。床のコンクリートから感じる熱気などもあったが、何より今日はいい感じに風模様だったらしくとても快適だった。学校にも屋上はあったが入ったことも無かったから内心人生初の屋上は私の気分を変えてくれるには十分だった。
「で……もう一回話すけど、何も言わずに聞けよ。
今から話すことは冗談でもなく遊びでもなくすべて事実だ。
俺にはお前にそれを話す必要がある。お前はそれをすべて受け止めなくてはいけない。わかったか?」
黒夜は自分と同じくらいの背丈のフェンス(要するにかなり大きい)に寄りかかって私に真剣な顔つきで問う。ここまで真剣な顔をされるとさすがに嘘話をする人には見えなくなってきた。それほど彼の顔には真剣さがにじみ出ていたのだ。
「ん……。」
私は小さくうなずいた。
今から話すことはすべて事実なんだ。私が 受け止めるべき事実。
——夏風が強く吹いた。
————————……
(同時刻:樹目線)
幼馴染が道端で倒れ病院に運ばれたと聞いた。
その日の朝はいつも通り晴天で。
いつも通り学校が始まろうとしていた。始まるはずだった。しかし、いつも通りではなかった。アイツがいつも来ている時間にいなかったからだ。俺野田 樹は恥ずかしながらも幼馴染の蘭山 美紀に幼い頃から恋心を抱いている。美紀と俺は幼稚園からの腐れ縁でよく一緒にあそんでいた。そのときの美紀は優しくて笑顔一杯の人気者だったのだが、美紀の両親が殺害されてからまるで人形の様に中身が抜け落ちてしまった。幼い美紀にとってそれはつらすぎる現実だったのだろう。毎日、誰を見ていないところで泣いていた。その事に誰よりも早く気が付いた俺は毎日美紀の所へ行き美紀を慰め続けた。何時間も何時間も。日が暮れるまでずっと美紀のそばにいた。そんな俺の行動が功を成したのか美紀は以前ほどではないが人と接触するようになったし笑うようにもなった。そして俺に「ありがとう。」といって笑ってくれた。それがどうしようもなく嬉しくて嬉しくて。その日の夜は寝れなかったなんていう思い出もあった。
そんな俺にとって幼馴染でもあり想い人でもある美紀が倒れたと教師に聞いたとき、俺は教師にしがみついて美紀がいる病院はどこだと問いただした。教師は苦虫をつぶしたような顔をして美紀が入院する病院と病室の番号を教えてくれた。そして放課後、美紀の病室へと飛んでいった。
「おいっ!美紀……!大丈夫……か……。」
勢い良くドアを開け、窓際のベッドへと目を移す。しかしそこに美紀はいなかった。あきっぱなしにされた窓から明るい夏の日差しが差し込み、夏風でカーテンが揺ら揺らと揺れているだけだった。窓からベッドへ視線を戻す。美紀が寝ていたであろうベッドはまるで暴れた跡のようにシーツはくちゃくちゃ。布団は床にほっぽられている。明らかに大人しくしている病人のベッドではない。
「あれ?美紀……?」
(なんでいないんだ?)
もしかしたらどこか他の所へ行ったのかも知れない。俺はそう思い、病室のベッドを綺麗に直した後美紀の病室を後にした。あいつは放浪癖がというたちの悪い癖を持ち合わせている。まさか、こんな所でアイツのもち癖が場を面倒くさくさせるとは思いもしなかった。いや、昔から面倒くさいとは思っていたが。ここでそれが仇となるとは。めんどくせぇなぁーと心の中で舌打ちをし、これもすべて美紀のためだ。と一人納得し俺は病院を徘徊し始めた。