ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「血相契約」〜オリキャラ募集中です!〜 ( No.29 )
- 日時: 2014/04/08 16:19
- 名前: 黒hana ◆JEhW0nJ.FE (ID: CFE7lDA5)
第8話(美紀目線)
黒夜の口から次々と出てきた言葉はあまりにも突飛すぎた。
どうやら黒夜は悪魔らしい。どうりであんないとも簡単に南京錠を破壊できたわけだ。いやそれだけで悪魔だとかは断定できないが。まぁそんな話は置いといて。黒夜達悪魔は契約者と契約して契約した時に自分の体内から生まれる魔力で生き続けるらしい。契約者と契約した悪魔はその契約者が死ぬまで契約者と共に生きていかなくてならない。契約者が死んだ瞬間悪魔は無契約悪魔となり、新たな契約者を見つける。それを繰り返し黒夜達は生き続けてきたそうだ。悪魔は契約者に自分が持つ魔力を注ぎ込み、契約者はその魔力で戦うという。つまり戦闘時?は悪魔は戦わず、契約者が悪魔の代わりとなって戦うらしい。契約方法は悪魔が契約者となるものの血をなめる。それだけで契約できるらしい。
「もしかして……」
私があの日の夜、意識を失う瞬間に傷口に当たった生暖かいものは……。やめよう。考えるのは止めよう。手首に変な紋章あるけど見なかったことにしておこう。黙って黒夜の話を聞こう。
黒夜はこの世界とは別の世界いわば異世界に住む悪魔でこの世界に下りてきたのはつい最近だという。異世界はこの地上とほぼ同じようでいろんな人が生活していたという。唯一違うのは悪魔と契約者が存在する。それだけなのだ。なぜ降りてきたのかと聞くと彼は
「契約者を探すため。」
と小さくつぶやいた。フードで顔が見えなかったが声が複雑そうだった。異世界には悪魔ともうひとつの人種「血約者」という限りなく人間に近い人々が住んでいた。血約者は悪魔と契約するために生まれてきたといっても過言ではないらしく血約者は悪魔と。悪魔は血約者と。契約してパートナーとなる。今までそうやってずっと血約者達と悪魔達は互いに支えあって生きてきたらしい。ならば……
「どうして、この世界に契約者を探しに来たの?
異世界にしか血約者はいないんでしょ?ここは人間しかいないよ?」
私はそういって黒夜を見つめる。その瞬間、黒夜は一瞬息を吸い込んだ。その瞬間、悟る。なにかあったんだと。どうしてもこの世界に下りて契約者を探す理由が。
すると黒夜は上を向き、へラッと投げ出したような笑みをこぼした。
そしてかすかに震えた声で私に言った。
「いねーんだ。あの世界にはもう血約者……いや『契約できる奴』が。」
(……?)
私は黙って彼の話を聞き続けた。
どうやらここ数年、異世界で血約者が急減したらしい。理由はとある研究機関が血約者達や他の数少ない人種を大量に誘拐し『実験台』としてさまざまな人間に改造し、血約力を持たない『人造人間』へと造り変えてしまったという。なぜ研究機関がそんなことをしたのか不明だが、街には様々な人造人間があふれかえり、ついに血約力を持つ血約者はほとんどいなくなってしまった。時と共に血約者は減りに減る一方、人造人間はありえないスピードで増えていった。ビル一個を持ち上げるほどの怪力をもつ人。身体に機械を埋め込まれた人。身体すべてを改造された人などが生まれていき、とうとう異世界は研究機関とそれに従う人造人間に支配されてしまった。
人造人間は契約できないので契約者がいないと生きていけない悪魔は契約することが出来ず、みんな死んでいってしまった。黒夜も同様、契約者が探せなかったようでこの世界に降り、契約者を探したのだという。
「そして、その契約者にお前が選ばれた。……っていうわけだ。」
「ひど、い。」
すべての話が終わった後、私は小さく言葉を漏らした。あまりにもつらすぎる話に立っていられなくなりその場にぺトンと座り込む。酷い。あまりにも酷すぎる。そんなこと許されるわけ無いのに……。頭の中が熱くなってきた。きっと夏の暑さのせいなんだろう。そうに決まってる。必死に自分に自己暗示をかけ震える足を動かそうとする。
「ひでぇ事だってことは俺だって知ってる。でもこれが現実なんだよ。
受け止め切れなくても、いつかは受け止めることが出来る。きっと……な。」
黒夜はニカッと笑ったが、その笑顔が無理矢理作った笑顔だってどの人がみてもわかるほど不器用な笑顔だった。そりゃそうだ。黒夜の気持ちは痛いほど良くわかる。自分の大切な故郷や仲間達が朽ち、死んで行くのただ指をくわえて見るだけしか出来ないなんて。座り込んだまま下を向く。コンクリートの灰色の床がえらく無機質に見えた。黒夜がこっちに歩み寄ってくる。夏の日差しから背を向ける黒夜の長い影が私に重なる。上を見上げるとそこには黒夜が立っていた。真っ黒で高身長な悪魔が。フードのせいで黒夜の顔はみえないがきっと悲しそうな顔をしているんだろうな、と頭の中で考える。私にはわからないけれども。黒夜の姿をボーッとみつめて思考をまわしていると黒夜は私に手を差し伸べてきた。
「で……契約者の美紀様?お願いがあるんですよ。」
「なに?」
黒夜の声は以外にもケロッとしていて口調にも違和感を覚えた。しかし、今の私にそんなことは考える暇もなく、黒夜が企んでいる事に馬鹿な私は気付きもしなかった。黒夜の気遣い。そう思っていた自分が今思えばアホらしい。こいつに気遣いなんていう優心なんぞ微塵もないのにもかかわらず言葉の裏の企みに私は気付かなかった。ゆっくりと思考を追いつかせ黒夜の手に手を伸ばす。黒夜が一瞬笑った気がした。
「じつはですね〜……」
私の指が黒夜の手のひらに付いた時だった。いきなり前からひっぱられビュウンと耳元で風を切る音がきこえる。なにをされたのか一瞬理解できなかった。黒夜は私の腕をがっしりと掴み、自分の身体を精一杯後ろに仰け反らせる。当然腕をつかまれた私も無理矢理立たされ(?)彼と同じ方向にまん前から倒れる。なにがおきたのかまったく理解できなかった。混乱状態に陥った脳内ではいろんなことが再生されていた。ようやく引っ張られているんだという現状を知り腕を払おうとするが黒夜の力は半端ないし、なにより今振り払ったって自分が怪我するだけだ。ならこのまま身体をまかせて黒夜をクッションにすれば問題ない。私は混乱する頭の中でそういう結論にたどり着き抵抗をしようとは思わなかった。それがいけなかった。
私の予想通りにこのまま二人一緒に倒れるのかと思いきや、黒夜の後ろになにか黒いもやのようなものが現れ、そのもやはどんどんと形・大きさを増していき、とうとう真っ黒いゲートのような穴が出来てしまった。そして私たちの身体はそこにめがけて倒れていく(あ。)と思ったときにはもう遅い。いろいろな試行錯誤は無駄だった。私はどうやってもコイツに陥れられる運命だったのだ。あいつに同情したばかりに。一瞬風が吹き黒夜コートのフードがバサッと布切れが風を切る音と共に取れ、やっと黒夜の顔を見ることが出来た。
私の視界に移った彼の顔は……
「一緒に異世界へ付いてきて欲しいんですよ〜。」
ありえないほど口角をあげニンマリと笑った『本当の彼』の顔だった。