ダーク・ファンタジー小説

Re: 「血相契約」〜オリキャラ募集中です!〜 ( No.36 )
日時: 2014/10/25 17:15
名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: QqBG3WgT)

(六様!遅くなって大変申し訳ございませんでした!空人くんと響くんです!)

第11話(空人目線)


悪魔と契約してみた。
なんて軽々しく言ってみる。そりゃそうだ。こんなことまじめに言ったって、誰も信じてなどくれないのだから。ただ、笑って、冗談として弾き飛ばされてその後また普通の日常に戻る。俺はそんなつまらない日常に興味なんぞ微塵もなかったのでなんの思い入れもなしに嘘の仮面をはりつけてニコニコ笑う。俺の周りにいる馬鹿共は俺の仮面の裏の笑顔にも気付かずに馬鹿のように笑う。あほらしい。興味なんてない。だからどうでもいい。
しかし、この自分のことを悪魔といい続ける男に俺は少し興味がわいた。俺は興味の湧いた事はずっと興味が湧いたまま保持し続けるタイプだ。だから、そんな珍しいヤツに「契約してくれ」なんていう面白そうなことをせがまれたら俺の選択肢は一つだけだった。

楽しいことになりそうだ。



舞原 響と妙に人間臭い名前を述べたコイツは最初に会ったときとは打って変わって無口で何を考えているのかわからないヤツだった。話しかけても短い返事しかなく、なんだコイツと思ったこともいくつかある。しかし、おれはもう目の前にいる悪魔、響の契約者なのだ。聞けば悪魔から契約者を引き離すことはできるが、契約者から悪魔を拒絶することはできないらしい。しかも、契約者は悪魔か自分、どちらかが死ぬまで契約者でなければいけないらしい。そんな現実を押し付けられたからにはいい加減コイツとの生活にも慣れなくてはいけない。珍しく大きめなため息をついた。産まれてこの方、興味が湧いたものに手を出して後悔しなかったことはないが、今ついた盛大なため息はきっとこの契約への後悔をしめしているのだろう。

(まぁ適当にしときゃなんとかなるか……。)

〜〜〜〜

「……君は幸せそうだな。」

とある日、響は俺に言った。

「まぁ、幸せか幸せじゃないかと聞かれたらきっと周りには幸せそうにみえるんだろうね。」

だからといって決して幸せというわけではないのだが。
目の前の青い空がひどくまぶしくて、俺はこんなに小さいものだったのかとふと思う。俺は幸せなのか幸せじゃないのか、自分で判断できるものなのかとふと疑問に思った。夏の入道雲が視界に移っては消えていく。

「でも。」

俺はむくっと起き上がり目の前で立っている響を見つめた。


「響だって知ってるんだろ?俺が本当に幸せなのかを。」

「…………空人が幸せに見えるから僕はそういったのだが。」

「じゃあさ……。」

俺は人差し指をピンと立て上を見上げる。さっきまでどかどかと青い空を占領していた雲達はもうどこにもなくなっていた。吸い込まれそうなほどすんだ青が見える。そんな悩みもなさそうな青に目の前の悪魔に俺は無性に心の中がもやもやした。目の前の青空とは正反対などこまでもどこまでも曇った空。今思えば俺の心の中は一度もこんな風に晴れたことがないかもしれない。

「響はさ、幸せなのか?」

「…………空人にはどう見える……?」

「いっちゃぁ悪いかもだけど、俺は響が不幸せに見える。」

長らく立てていた人差し指を響に向け、俺は言い放った。

「でも、暗いやつほどじつは幸せだったりするのかもな。まぁ、俺は少なくともそうは思わないけど。」

口角をわずかに上げ、俺はまた上を向いた。もう雲もない。静かに涼しい風が吹いている。すると、さっきまでずっと考え込んでいた響がふと口を開いた。響の白い髪が涼しい風によって斜めに揺れる。


「……じゃあ僕はきっと不幸せなんだろう…………。」

「……なぜ?」

「……空人が言うから。」


…………。

こいつは契約者である俺の意見をすべて受け入れ、俺の命令もすべてすべて受け入れる。なぜ?何百回聞いても答えはひとつ。

『悪魔は契約者に従わなくちゃいけないから。』

それが本当にコイツの答えなのか。今になってもわからない。わからないことばかりだ。

空にもう白い雲はない。小さな雲も大きな雲も入道雲も。そこにあるのは真っ暗などんよりとした雨空の模様。青はすべて黒に塗り消された。湿ったにおいがする。夏にしてはめずらしい大物の予感だ。

もうすぐ雨が降るだろう。








そんなつまらない日々の中、俺は響によって異世界へ連れていかれたのはいうまでもない。