ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「血相契約」〜オリキャラ募集中です!〜 ( No.37 )
- 日時: 2014/12/14 22:03
- 名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: CFE7lDA5)
- 参照: 名前の横のヤツもうこれでいいや。
第12話
「……本当に?本当にあなたはそれでいいの?」
俺は目の前で訝しげな顔をする女に俺は黙ってうなずいた。かまわない。美紀を助けるためなら。女は眉間にしわを寄せ俺をずっと怪しむような探るような顔つきをしていたが俺がうなずくとゆっくりと元の顔に戻っていって、くすりと口角を上げた。そして満足そうにうなずくと「やっぱりこういう男を契約者にしたほうが何かと得なのよね……。」と小さくつぶやいた。その台詞はコイツが本当に悪魔だということ、そして、俺がコイツの契約者になったのだと、そんな現実を今、目の当たりにしていると理解させてもらうには十分だった。女……、いや梓は踵を返し、俺に背を向ける、梓の銀か白かうまく表現できない絶妙な色をした長い髪が大きくバサリと揺れる。そして青い夏の雲ひとつないそれに大きく手を伸ばして何かをつぶやいた。何を言っているのかはよく聞こえなかったがひとつひとつ、つむぐように梓は呪文をつぶやいていく。その瞬間。
「うぉ……!?」
その声は歓喜なのか、それとも驚きの声なのか、あるいはどちらの意味も含んでいるのか、俺の口からは表現できないような声が漏れその声を発した瞬間俺の視界に写るものすべてがすべて白くなった。淡い絵の具を使われて描かれた風景画に真っ白いペンキをぶちまけたような。じわじわと明るい白は俺の視界にさっきまで存在していた世界を真っ白なまでに塗りつぶしていく。梓の姿はもう見えないがきっと『向こう』につくころには一緒に付いて来ているのだろうと頭の片隅でそんなことを思いながら俺は体のそこから波のようにあふれ出てくる何かに身を任せた。瞼をゆっくりと閉じる。不思議なことに目を閉じた世界は真っ暗ではなく淡い白色に覆われている。
(待ってろよ、美紀。今『そっち』にいくから。)
——————————数分前…………。
「あらあら。なんかうちの黒夜がやらかしちゃったみたいね。」
ふと絶望に打ちひしがれる俺の『頭上』から聞こえる声。ん……?頭上……?
「!?!?!?!?」
俺は反射的に体制を崩し真上を見あげる。え。うそだ。なんでなんでなんでなんで。俺の見上げた先には真っ黒で大きな悪魔のような羽をゆらゆらと動かし宙に『浮いている』女の姿があった。女は羽がゆらゆらと揺れるのと同時に微かに上下に動いている。俺はあまりの非現実的なことにまたもや反射的に後ろに下がった。女は特に何も気にしていない様子で俺を見下している。顔こそ笑っているものの口はいやらしいような笑みを浮かべていて、その笑顔の意味にはきっと大事な人を目の前で連れさらわれた俺への同情とそれと同じぐらいの量の嘲笑を含んでいた。その嘲笑はきっと何にもできない無様で惨めなちっぽけな俺へ向けているのだろう。
「あいつはすぐに行動しちゃうやつだから。ごめんね。あいつに代わって謝るわ。って聞いてる?おーい??」
女は俺のかなり上のところでふわふわと浮いていたのだか俺が話を聞いてないことに気がついたのかむっと顔をふくらましてシュンと下まで降りてきた。コトリ……と女がはいているヒールの小さな音がやけに耳に残る。そこで俺は本当にこの女が浮いていたのだと理解した。ういていたんだ。本当にこいつは。浮いていたから着地しても大きな音はならず、こんなやわらかい音が鳴っているんだ。本物の羽だから俺の目の前に降りてきたときに風が吹いてきたんだ、と。本当に、こいつは……。
「ちょっとー。ねぇってば。」
女は俺の前で手を振ったり、パンと手を鳴らして俺を驚かそうとしているが俺はそんなことにかまっている暇はなかった。頭の中がごちゃごちゃでわけがわからなくて、これが世間で言う混乱だとうまれて初めて思った。よく見ると女の姿は常人離れしていた。顔は美人だが膝位まである長い銀か白かよくわからない色の髪の毛は夏の暑い日ざしでキラキラと光っていてそれと反対色の後ろにでかでかと構える大きな真っ黒い羽。どこかで見たことがある。こんなヤツをどこかで。
「あのー。…………聞いてないわね……。」
女は不機嫌そうな顔になっていたかと思えば今度はあきれるような顔をして綺麗な眉を下に下げて俺を哀れんだ目で見てきた。そんな女のことは気にもとめず俺は頭の中に眠るすべての記憶の引き出しを引っ張り出す。頭の中は走馬灯のように今までのすべての楽しかったこと、悲しかったことがものすごい速さで走っては消えていく。そんな中ひとつのある記憶を探り当てた瞬間今までのことがまるでなかったかのように消えていった。…………ああ。そうか。思い出してきた。………………父だ。そうだ父だ。父の図書室にあった一冊の古い本。そこに、そこに書かれていたのは……………………。
「あ……くま…………?」
俺はかすれ、かすれた小さな声でつぶやいた。常人離れした容姿、真っ黒でおおきな羽。首元にある紋章。俺が幼いころ、亡くなった父親の図書室から探し出した一冊の大きな本。そこには悪魔に関するすべての空想か現実なのかわからない話と悪魔の姿、特徴などすべてが書き込まれていた古い本だった。女は俺の言ったことをききとったらしく、下げていた眉を大きく上げて俺の顔を見つめていたが、そのあとすぐにスッと目を細めるとふぅ、とため息をつき俺から離れてやれやれといった感じで言った。
「そうよ。正解。まぁ今はそんな話はしてなかったんだけど。」
やっぱりきいてなかったのね。
野田 樹 17歳高校二年生。生まれて初めて悪魔とご対面。