ダーク・ファンタジー小説

Re: 「血相契約」〜参照350以上感謝!〜 ( No.38 )
日時: 2014/10/28 19:17
名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: CFE7lDA5)

(Freesia様!大変お待たせしました!零慈くんと穿くん登場です!)

第13話(零慈目線)

「納得がいなかいなぁ。」

暑くて暑くてしょうがないある夏の日の昼下がり。僕は目の前でただ黙りつくしている自称悪魔に語りかけるかのように愚痴を言い始めた。まぁ、愚痴のターゲットは今目の前にいる悪魔だから愚痴ではなく文句なのかもしれない。まぁそんなことはどうでもいい。肝心なのは僕がなぜこいつに文句という名の愚痴をたたくのか。理由なんて簡単だ。こいつはこの僕を異世界なんていうわけのわからない場所へと連れ去ろうとしているから。簡単な内容に聞こえるが内容はそんな簡単なことではないことはこの話を信じる人しかわからないんだろう。いくら契約の話のときは大目に見て契約してやった僕でもこの目の前にいる悪魔の発言にやすやすと頷くようなそんな甘い奴ではない。

「とりあえず、百歩引いて君が悪魔だということは信じてあげよう。」

仮に、だが。

「…………。」

僕の目の前で棒立ちしているこの悪魔は自分のことを穿と名乗った、本当の名前を教えろといっても頑なに首を縦に振ろうとしない。そこも気に入らない。僕が本当の名前を教えろといっているのにこいつは依然として教えようとはしない。そこがまたこいつへの愚痴(という名の文句)のレベルを上げていくのだ。というかそれ以前にこいつにちゃんとした名前があるのかすら怪しいのである。そこもまた許せない。

「どうして僕についてきて欲しいのかな。ちゃんと答えてほしいんだけど。」

現時点で僕の脳内は異世界へ行くという選択肢に少なくともYESという言葉を出すことはないだろう。依然としてNOを張り続けている。穿はこの僕がここまで優しく言ってあげているのに黙りっぱなしだ。これじゃあ僕と初めて会ったときに少しだけ話をしたのが本当に珍しいケースのようではないか。いや、もしかしたら本当に珍しいケースの一部だったのかもしれない。穿を見つめる。穿は、

「(私に喋れと言うのか…)」

と僕に小さく目で訴えてきている。これにはさすがの僕もため息をつくえざる得なかった。小さくため息をつくと、穿の顔も見たくなくなってくる。仕方なく穿から目をそらしそのまま背を向ける。

「あー、もう付き合ってられないね。きみからお願いしてきたっていうのにさぁ。」

とにかく僕はいやだからね。大反対だ。
そう僕がはき捨てるように行った瞬間、穿の反応が明らかに動揺のほうへと傾いた気がした。しかし、そんなことに気を向けずそのまま僕は歩き始めた。もうそろそろチャイムが鳴るころだろう。いつまでもこんな奴にかまってる暇は持ち合わせていない。僕はいつだって忙しいし、大変なのだ。こんな奴に時間を割いてやることすら人生の中で惜しいといえるほど。

(僕の貴重な時間を……まったく……。)

ぶつぶつと小さく文句をつぶやきながら穿になど目もくれず僕は歩を進める。後ろで穿が術を発動させていることなんぞ知らずに。

「……なら……無理矢理にでも……きてもらう……。」

「………………はぁ?」

気づいたころにはもう遅かった。僕は穿がなにをつぶやいたのか気付かずに後ろを向いた。その瞬間、僕は真っ白い光に包まれた。穿の見えない目がいやらしく笑ったような気がした。その瞬間僕はこいつにはめられていたのだと知る。やられた。そんなこと脳内で思ったってすぐに消された。僕はこいつに騙されたのだ。この僕が。こんな変人悪魔に。






一瞬にして僕の体は感覚を失ったようで、もう何も考えられずに完璧に白に飲み込まれた。