ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「血相契約」〜参照400以上感謝!〜 ( No.40 )
- 日時: 2014/10/31 23:54
- 名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: CFE7lDA5)
第13話「彼らの世界」
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目の前にあるさびれた鉄の扉をゆっくりと押す。手に重い感覚がゆっくりと波のように伝わってくるのがわかる。その瞬間、扉はゆっくりと動き出しギィィィ……と重苦しい音を立て、室内の光景を露にしていく。徐々に鉄の扉の隙間から露になっていく室内はとてもというほど綺麗ではない。瓦礫はいまだ散らかったままだし、鉄骨は丸出しのところもある。家具も生活感が一切ない。おまけに天井がまるまる抜けていて上を見上げればいつでも夜空……ではなく黒く曇りきった空を拝むことができることができるという得点付きである。私はそんな室内(?)にゆっくりと足を踏み入れる。コンクリートの壁が所々崩れている。そんな室内においてあるソファに私の相棒こと黒夜は寝転がっていて。黒夜は私が室内に入ってきた瞬間ちらりとこちらを見てきたがまたすぐに吹き抜けになっている天井から空を見上げた。今日は珍しく綺麗な夜空がでている。星一つ一つが確認できるほど。いつもは汚い灰色の排気ガスのような色をした曇り空しか拝めないのに。私はゆっくりと黒夜のいるソファに近づくと辺りを見わたした。どうやら黒夜以外はこの部屋にはいないようだ。みんなもう寝てしまったのだろうか。まぁ、この建物は以外に広いからほかの部屋にいるという可能性もあるかもしれないが。私は黒夜の隣に腰掛ける。
「…………今日は夜空、すっごい綺麗に映ってるね。」
「……………………ん。」
「いつもはどんより空なのにね。」
「……………………ん。」
何だお前は。「ん」しか言えないのか。あとちゃんと人と話をするときは顔を見ろ。私の頭の中で一番最初にこの2フレーズが出てきたがこんなやつに言っても意味がないことはこいつと一ヶ月間一緒にすごせばどんな馬鹿でもわかることであろう。こいつはそんな奴なのだ。そう自分に脳内で言い聞かせれば自然に頭の中を占領していた2フレーズは吸い込まれるかのように消えていった。わたしもかなり冷静になれたようである。こいつに対してはまだまだなのかもしれないが。天井を見上げる。私の視界には満面の星にうめつくされた雲ひとつない星空が映った。この拠点に初めて連れて来られた時、最初は黒夜に文句を言ったものだが、今となっては何もいえない。黒夜は「ここが俺の中でしってる一番安全なところだから文句言うな。」と言ってきた。どうやらこの世界は本当に危険だそうで、私は実際この世界ではこの拠点以外行った事がないのでよくわからないのだが。というか黒夜が拠点から出してくれないのが現実である。
「みんなは?」
「あー……。零慈と碧はもう寝た。空人はまだ起きてるんじゃね。樹はしらねぇ。」
「そっか。」
………………………………沈黙である。
「ねぇ。」
「んだよ。」
「あのさ……。」
————どうして私を契約者にしたの?
その声は静かな室内によくというほど響いた。その声は微妙にかすれていたような気がして、それが黒夜に伝わりそうで少しだけ怖かった。どうしてかすれていたのかはよくわからないが、もしかしたら私の心の中に潜む闇が垣間見えた瞬間だったかもしれない。唇をぎゅっと噛む。どうやら私は気が付かないうちに下を向いてしまっていたらしい。ぎゅっと何かを願うように硬く握られた手が見える。その手にはすこし汗がついている。しかし、黒夜は気付かなかったのかそんなことをきにするそぶりも見せずに私のほうを横目でちらりと見た。そしてまた前を向くためらう様子もなく口を開く。
「ふと目に付いたから。だろうな。」
……………………………………え?
その返事はあまりにも軽すぎて、一瞬私の思考回路を奪っていった。それほど、黒夜から返ってきた返事は私の予想をはるかに裏切ったのである。