ダーク・ファンタジー小説

Re: ぼくらときみのさいしゅうせんそう ( No.38 )
日時: 2014/10/30 21:03
名前: 利府(リフ) (ID: LI/icqd3)

時は夕暮れ、黒い雲と朱の空の美しいバランス。

タケルに選んでもらったコートとネックレスが二つの色を反射する。


マツリバは死んだ。
失血死、私じゃありえない理由で。

まぁ特にショックもない。


寧ろ私が気になるのは…


「モモ、どーしたの突っ伏して」

こいつの体制だ。

病院お手製の布団を放り捨てて、バッチリへの字型に頭から床に
ドリルでも掛けてんのかという角度でモモが突っ伏している。


「手袋とられた」

「おう」

「ガスマスク取られた」

「…おう」


「もうやぁよ…あったかいことは分かるけど布団に入れる気しない」


うがぁ、と叫びながらごろごろと転がるモモ。
震える手でナースコールを押したい私。


「あ゛ーっもう、精神科医さぁぁぁぁぁん!!」






「…アリガタウゴザイマス」
「うむ。というかお前にとってガスマスクと手袋って何なの、覚醒剤?」


とりあえず某ネコ型ロボット的なイントネーションで

『マスクと手袋セット〜♪』

って言ったら落ち着いた。
ありがとう青い猫。


ぎゅ、と手袋を引っ張り、ガスマスクを黒い手が取る。
どうせすぐに隠れてしまうであろうモモの素顔は、夕日に照らされてどこか美しい。

まさに朱と黒か。

「…ミコっちゃんの反応ウけたわ」
「え、なに?確信犯だった?腹えぐるぞ」

「久々に楽しかったぁ、

 …もうあっちじゃあないだろーね、こんな事」


モモが目を細めた。
口は見えないから、笑ったのかは分からない。


「そのお気持ちだけ頂きます」
「…へぁ?常用外だゾその言葉」


「家訓。まぁ私的には逆境に逆らう、って意味」

「ほへー。じゃあたしも頂く」


その会話に二人でぎゃはははと笑って、今度こそ隣の病室の人から
ナースコールを押され看護師さんに土下座するのは後の話。



空では、夕日が沈む。