ダーク・ファンタジー小説

Re: ぼくらときみのさいしゅうせんそう ( No.5 )
日時: 2016/05/14 22:33
名前: 利府(リフ) (ID: I69Bg0jY)

能力専門高等学校、略して能力高校。
あたしは一貫して能力高等学校と呼ぶそこは。

入学方法は推薦のみ、その推薦の優先的条件は

「普通の高校生を超越した能力を持つ者」
能力…即ち、自然の変化から人の大量殺傷まで。


能力さえあれば、この学校は何もすることはない。

試験も能力に限られる。

授業も能力に限られる。

全て能力を求めている。


ここでだいたい、予測は付いただろうか。
そう、あたしには能力がない。

いくら学力があっても、下等。

いくら強くても、下等。

一人ぼっちだ、哀れだ。
そんな声が毎日、毎日、遠くから聞こえてきて、もう耳鳴りのような煩わしさ。
もう幻聴で片づけてしまいたいのに、カンザキユリがあたしを現実に引き戻す。
今だって煩わしく聞こえてくるそれが大嫌いだ。耳を塞いでも、笑い声が聞こえてくる。


しかしそれが、一瞬で砕け散った。

「お、おい!?…あんな生徒は記録にないぞ!」

先生の叫び声と共に、皆の視線が上に向いた。
あたしも剣呑な動きで顔を上げて、ユリさんも後ろを振り返った。


校舎の屋上、そこにいたのは。



「こんにちは、下等種族の少年少女様」




長く伸びたポニーテールを揺らしながら。
いつどこで手に入れたのか、あたしたちのものと寸分違わぬ制服をまとって。


影は、恐ろしく高い校舎から躊躇いもせずに落下した。