ダーク・ファンタジー小説
- (3)序 章 〜終焉へ向かうプレリュード 前 篇〜 其の三 ( No.6 )
- 日時: 2012/06/11 00:14
- 名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n1184bd/3/
「——ゴホン。ユウ、クラリス。仕事再開だ」
「え? ああ、そうだな……」
「……うん」
トウヤの掛け声に我に返った二人は各々行っていた動作をやめ「仕事に集中」と、息を吐いて気持ちを入れ換え……。先を急いだ。
アリスが示すナビ通りに奥に進むにつれて、徐々にではあったが……辺りの雰囲気が変わって来ていた。
少々、物々しい雰囲気が辺りに立ち込め。トウヤたちは何か異変に気付く。
前方に自動人形もしくは人間たちが誰かと交戦したのか、傷を負いながら倒れ伏せていたのだ。
状態を確かめるべく、トウヤたちは彼らの元に駆け寄る。
「……死んでる、か……」
傷を負って倒れ伏せている一人を見つめながらトウヤが呟く。
トウヤが見つめている人物は身体に切り傷が付けられており。こちらはトウヤのようにイヤリングを身に付けていたが、そこにあるはずの宝石が砕かれていた。
「こっちもだ」
ユウも倒れ伏せている人物を見つめながらそう口走る。
こちらもイヤリングを身に付けているが、宝石が砕かれている。
「……こっちは——ただの自動人形……」
倒れ伏せている人物を見つめながらクラリスも静かに口走る。
「ふむ……」と、トウヤはこの現状を見つめながら考察する。
そして、考えが纏まったのか。トウヤは徐に口を開き、
「……俺たち以外にもここに侵入している奴がいるのか……。それも一足先に……」
「じゃ〜、先に行けばソイツが待ち構えているって事か?」
「待ち構えているかどうか分からないが、その人物がもし俺たちに襲いかかって来たらその時は——」
「……ああ」
「……うん」
二人は力強き頷き、彼らは先を急ぐ。
進めば進むほど、通路や部屋などに倒れ伏せている者たちが増えて行き、悲惨な状況を物語っていた。
——それも、トウヤたちが目指している方向に向かって……。
人間の血で赤く染まってしまった白い通路を進み、少し広いスペースに出た。その先に半開きになった人長け二倍以上ある大きな鉄の扉が彼らを待ち構えていた。
その隙間から白い煙と共に淡い光が漏れ出ている。そこを見つめながらトウヤが。
「……あそこか」
「ああ、そうみたいだな。だけど……」
「……うん、誰かいるよね……」
気配を消し、静かに扉の傍まで駆け寄るトウヤはユウたちに「こちらへ来るように」と手で合図を送る。
それに引き寄せられるようして二人も扉に近づく。
そして、トウヤが扉の隙間から中を覗き込んでみるが、そこから漏れる強い光が邪魔で中の様子を窺う事が出来なかった。
しかし、トウヤはそんな事よりも。この施設ならびに自分たちが承った仕事に少し疑念を抱いていた。
そもそもトウヤたちは「武装集団に密売するために銃火器などを秘密裏に生産していると言う工場がある」との情報を聞きつけ、それを潰しにここに赴いていた。
だが、それらしいモノは一切なく。
——ここは何かの研究施設じゃないか、と。トウヤは踏んだ。
そんな考えが及んでいると、
「——早く、入ってきなよ。僕の可愛い後輩たち……」
突然、扉の中から呼びかけられた。
その声はトウヤたちには聞き覚えがあると同時に、この状況下で最も遇いたくはなかった人物の声で。
謎の声を聞いた瞬間。ユウとクラリスが顔色を変え。堪らず、ユウが武器を携えながら扉を蹴って中に駆け込んでしまった。
その行動にトウヤは「チッ……」と、舌打ちをし。少し顔色が優れないクラリスを気遣いながら、ユウを追って中に入って行く。
扉の中は白い煙に包まれ。前方から発せられる強い光がトウヤたちを照らす。
その光に向かって一本の目に見えない道があり、それに沿って二人は進み。ようやく辿り着いた一番強い光を放っている場所に、トウヤとクラリスは足を踏み入れた……。