ダーク・ファンタジー小説

(1)第一章 〜再会と旅出〜 其の二 ( No.11 )
日時: 2012/06/12 21:46
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n1184bd/6/

 ——今から一年三ヶ月前。
 クラトリアミラージュが起こって、三ヶ月後……。
 突然、起こった謎の現象……。
 この世界「エミリア」全土ではその話題で持ち切りだった。
 クラトリア山の一部が、一度消滅し。再び、現れたのだ。

 だが、その現れた一部分は「亜空間」と化しており、現地に向かった調査隊が皆——生きて帰って来る事はなかった。
 ——しばらくして、人ならざる者へと変貌を遂げて調査隊が舞い戻り、己の欲のままに人々を捕食して回る事件が発生した……。
 外界でそんな事が起きている事も知らず、レアはいつも通り水を汲みにシアクス湖へ赴いていた。

 ここシアクス湖はシアクスの森に囲われるように存在しており、森を抜けなければ来る事が出来ない秘境と化している。
 そのため、人なんて滅多に来ないこの湖は汚れを知らず。
水質の良いシアクス湖は浅瀬なら底が丸見えで、優雅に泳ぐ魚たちも視認出来た。

 そして、何と言っても。
 半径数十キロにも及ぶ広大な湖であるここは、世界最大の湖として知られているのだ。
 レアは水汲みように持参した桶を持って浅瀬に向かう。
 腰を下ろして、桶で水をすくうと。それをじっと眺めた。

 太陽の光が相まって桶に入った水が煌めく。
 波紋が揺らめく水面にレアの顔が映し出される。
 まだ眠いのか目が半開き状態である。

 「うん」と、首を縦に振ると、目を覚まそうと桶に顔を突っ込み、洗顔する。
 「ブハー」と、顔を上げて、徐に右方に目をやった。
 視線の先には桟橋があり、そこでよくレアは釣りをしていた。

 しかし、いつも通りの変わらない光景を目の当たりにするはずのレアの表情が、心なしか険しいモノになっていた。
 桟橋付近の浅瀬に何かが打ち上げられていたのだ。
 それが気になったレアはすぐさま、桟橋に赴き。
 そして、気付く。

 ——その打ち上げられているモノが人間だと……。

 急いでその者を引き上げらんと、近づいたレアの視界に飛び込んで来たのは。
 ——黒髪の少年が銀髪の少女を大事そうに抱きしめたまま。気を失っている光景だった……。