ダーク・ファンタジー小説

(3)第一章 〜再会と旅出〜 其の二 ( No.13 )
日時: 2012/06/12 21:49
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n1184bd/6/

 ——数時間後……。
 辺りの景色がすっかり赤く染まった夕暮れ時……。
 ログハウスの煙突から出る煙と共に良い香りが森の中に漂う。
 その匂いに釣られてか、森に住む動物たちがログハウス周辺に集い。微笑ましい光景が広がる。
 そうとも知らず、良い匂いを漂わすログハウス内にいる彼らはのんびりと夕食を摂っていた……。

 「——ふむ。やはり、レアの料理は神がかり的に上手いです。『俺の嫁に欲しいぞ、コンチクショ—っ!!』レベルですね」

 自分の作った料理を食べながら、淡々と自画自賛するレアにユウは小さく息を吐く。

 「……自画自賛していて寂しくないのか?」
 「いえ、全く……。当たり前の事を述べただけです。——ただ、誰かさんが何も言わないから、こうしてレア自ら褒め称えている訳ですが……」

 と、徐に向かいの席に座るユウの事をレアはジト目で見据える。
 その妙な視線にユウは堪らず、視線を彷徨わせて惚けて見せた。

 「はっはっは……。全く……どこの馬の骨か分からんが、甲斐性の無い野郎だ……」
 「……ええ、全くです……」

 ユウの言葉にレアは同意しつつも、さらに彼を見つめる眼力が増す。
 レアの痛々しい視線を浴びながら、黙々とユウは食事の手を進める。
 その際に気を付ける事があるとすれば、彼女の事を見ないように心掛けるだけである。

 そんな微笑ましいとも言い難い晩餐会が開かれているログハウス周辺に集っていた小動物たちが——突然、こぞって森の中へ消えて行く……。
 それと同時に、森の中から荒々しい息遣いと共に不審な人物たちがログハウスに向かって足を進めていた。

 ——しかし、その者たちの様子が少しおかしかった。

 若い男女の三人組で、少年に背負われながら駄々をこねる少女とそれをなだめるように付き添う少女……。
 土地柄を鑑みれば、遭難者に見えなくもない構図の面々である。
 だからこそ、ようやく見つけたログハウスは彼らにとって助け舟のような存在ではあったが……。

 ——中の者たちは歓迎ムードではなかった。

 外から人の気配を感じ取ったユウとレアは時間帯を考慮した上で「このような辺境の地に人なんて来ないはずなのに……」と、殺気付いていた。

 ——そして「コンコン」と、扉にノックをされ。

 二人は各々武器を——ユウは刀。レアはユウに渡された拳銃を後ろ手に携える。
 そのまま扉に近づくと、何かを確認するかのように互いを見合って、それに頷き。
 先陣を切ってユウがノックされた扉を開けた。

 「…………はっ?」

 前方に広がる景色を目にしたユウは呆けながら、思わずそんな言葉を漏らしてしまった……。