ダーク・ファンタジー小説

(2)第一章 〜再会と旅出〜 其の七 ( No.21 )
日時: 2012/06/17 21:22
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n1184bd/11/

 ——翌日。
 夜更かししていた野郎二人は、女性陣に叩き起こされて最悪の目覚めとなった。
 目が半開きで意識がもうろうとしながらも身支度をする。

 「……眠い」
 「言うな。それにお前はまだ眠れた方さ。俺なんか隣の部屋でアイツらが乱れまくった姿で寝てると思って、興奮して眠れなかった……」
 「……エロい」
 「言うな。俺が一番自覚している。——だが、男の性には逆らえんだろ……」

 馬鹿なやり取りを交わしながら、トウヤたちは身支度を済ませてリビングに向かう。
 リビングにはとっくに身支度を済ませて、優雅に紅茶を嗜むミュリアと朝食の食パンにかじりつくアリスの姿があった。

 「遅いお目覚めですわね」

 リビングに姿をあらわした二人に気付いたミュリアがそんな事を微笑み掛ける。

 「まぁ〜な。男には色々と準備する事があるんだよ。——な、ユウ」
 「……そこで俺に振るな……」
 「アンタたちの事だから、どうせ仕様も無い事を企ててたんでしょ?」

 食パンを片手に淡々と呟いたアリスの口周りには食パンのカスが点々と付着している。
 その姿にミュリアはうっとりと微笑む。

 「——おはようございます。ユウ、トウヤ様」

 キッチンからレアが現れ、目覚めた二人に丁寧に会釈をしながら挨拶をした。

 「おはようございます、レアさん。今日もお綺麗ですね」
 「——レア。トウヤの事は全面的にスルーでいいからな」
 「はい、承知しました」

 ユウの言葉を了承したレアは食卓に並べていた二つの朝食セットの内の一つを回収し始め、それを持ってキッチンにはけて行き。
 残った朝食セットの前にユウが着席すると、そのまま朝食に手を付け始めた。

 「え? マジ? 俺、朝飯抜きなの? ちょっ、レアさん! それ、俺食うから捨てないでよっ!」

 慌てながらレアを追ってキッチンに向かったトウヤを後目にユウは淡々と朝食を食べ。
 他の二人も何事もなかったように各々の事に勤しんだ。

 昨日までの——レア小屋にはなかった賑やかな雰囲気にあてられてか、シアクスの森に住む動物たちが何事かと小屋周辺に集い始め。
 特に注目するモノでも無い、馬鹿なやり取りがただ繰り広げられている小屋内部には少年少女たちの笑みが満ち溢れる。

 朝から一年半ぶりの再会を祝っての宴とばかりにはしゃぐ彼らの姿は本当に心の底から楽しんでいるのが、伝わって来るほどに清々しく。

 ある者は、腹を抱えながら笑い。

 ある者は、その光景に優しく微笑みかける……。

 そんな馬鹿騒ぎを起こしているリビングの奥にある一室に眠る少女——クラリスは相変わらず「すやすや」と安らかに眠っている。
 が、心なしか彼らの馬鹿騒ぎに触発されて笑みを溢しているようにも見受けられた。
 このまま、彼女が目覚めればどれだけ喜ばしい事だろうか……。

 しかし、クラリスは目覚める事は無く。
 馬鹿騒ぎをしていた彼らは、レアに彼女の事を任せ。
 眠り姫を目覚めさせる方法を求めて旅立って行った……。