ダーク・ファンタジー小説
- (2)第三章 〜夢見る愚者とおしどり夫婦〜 其の五 ( No.39 )
- 日時: 2012/06/25 21:03
- 名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n2549z/21/
そうこうしていると、彗月と相対する四人が再び先ほどの波状攻撃の陣形を取り、案の定大柄の人物が先陣を切って、冷気を漂わせる右腕の拳を地面に叩き込む。
すかさず、彗月は横っ跳びでその攻撃を避けるが、そこを狙って二陣の長身の人物と細身の人物が攻撃を仕掛ける。
その行動に彗月はその場を動く事無く、凄惨な笑みを浮かべながら右手に持つ水剣を地面に突き刺す。
と、地面から彗月を囲うように周りから水柱が勢いよく噴き出し、長身の人物が左腕を振って放出させた炎を消し去った。
平然とした様相で彗月は先ほど水剣を地面から抜き取り、今度は自分目掛けて落下する岩石に視線を向け、水剣を徐に取り出した腰辺りに納め——居合抜きの態勢に入り。
タイミングを見計らい直撃する——すんでの所で勢いよく抜刀し、振り抜かれた軌道を象った水の刃を放つ。
水を圧縮して創られた水の刃は岩石目掛けて放たれ、軽々とそれを真っ二つに斬り分け。
斬り分けられた岩石は彗月を避けるように地面に落下し、砂塵を巻き上げた。
しかし、彼らの攻撃はまだ終わってはいなかった。
——最後の一人。
中肉中背の人物が風を圧縮して創る弾を彗月に向けて発射しようと、少々手こずっている所に彗月は水剣を今度は軽く振り抜いた。
先ほどと同様に振り抜かれた軌道を象った水の刃が再び放たれ、中肉中背の人物の上体目掛けて放たれた水の刃が彼に触れた瞬間……。
——身体を斬る事無く、弾け飛んでしまった。
それには中肉中背の人物は拍子抜けした。
自分も先の岩石のように斬られると思ったからだ。
だがしかし、その油断が彗月にとっては好都合だった。
彗月は左手で何かを掴み取るように勢いよく腕を動かし、徐に握りしめる。
すると、弾け飛んで空気中に飛散した水が中肉中背の人物の顔を目掛けて集結し、水玉のような形を成形し、彼の呼吸の妨げとなり。
中肉中背の人物は顔に纏わりついているそれを必死に剥がし取ろうとするが、相手はただの液体で掴もうとした所で水に手を突っ込む形になるだけだった。
——呼吸が出来ず、しばらくもがき続けるが……。
無情にも限界に達し、中肉中背の人物はそのまま堕ちてしまった……。
彼の気絶を確認した所で彗月は握りしめていたその左手を解き放ち、成形した水玉を解除する。
「……まず、一人」
軽々と一人を攻略した彗月は同じように今度は細身の人物に向けて水剣を軽く振り抜くが……。
さすがに同じような攻撃は通用するはずも無く、容易くかわされ、反撃を受けた。
しかし、先方の岩石攻撃も同様に彗月に通用する事無く、彗月は「単発じゃダメなら」と水剣を軽く振り抜いて創る水の刃を連続で細身の人物に向けて放つ。
単発だけしか放てないと踏んでいた彼は意表を突かれてしまい、三発目を避ける際に左腕に触れてしまって、その水の刃は前例と同じく弾け飛ぶ。
と、すかさず彗月は先ほどと同じように水玉を成形させ、細身の人物の呼吸妨害をする。
こちらも懸命にもがいて水玉を剥がし取ろうとするが……。
——結果は変わらず、限界に達してしまいそのまま堕ちてしまった……。
彗月は気絶を確認した所で水玉を解いた。
「……はい、二人」
続けざまに二人も攻略した彗月に先制攻撃と言わんばかりに長身の人物が左腕を振って炎を放出させ。 そこに大柄の人物が冷気を漂わせる右腕の拳を地面に叩き込んで、波状攻撃に打って出た。
彼らの行動に少しバツが悪そうに表情を歪ませるが、彗月は長身の人物が放つ炎攻撃に対抗せんと水剣の形状を一度解き、それで出来た水を身に纏う。
さながら水の鎧を纏った状態で長身の人物に向かって突き進みつつ、事のついでに大柄の人物が放った遠隔氷柱攻撃をかわし。
長身の人物が放出した炎が目の前に迫りながらもそのまま躊躇う事無く突き進み、先方の炎を身に纏う水の鎧で消火する。
消火の度に起こる白い蒸気で辺りの視界が悪くなるが彗月には関係なく、炎が放出される方向に目掛けて足を進め。ようやく炎の出所たる長身の人物を捉える。
と、そのまま水の鎧の一部を彼の顔に付着させて水玉を創り。
——そして、長身の人物を軽々と堕とした……。
彼が気絶した所で彗月は水の鎧と水玉を同時に解除する。
「……これで、三人目」
水の鎧を身に纏い身体がずぶ濡れになった彗月は最後の一人、大柄の人物を見据えた。
先方は仲間が連続で倒されて少し後退りするが、冷気を漂わせる右腕の拳を強く握り締め彗月に向かって駆け出す。
その潔い行動に彗月は、
「ふん」
と、鼻で笑って軽くあしらいながら徐に右手を広げ、その掌の上で水を圧縮して創り出した水球をボールと見立てて地面に置き。
シュートを決める要領で水球を大柄の人物に向けて勢いよく蹴り飛ばした。
水球は大柄の人物の腹部に目掛けて飛び、弾道がはっきりと見えていた彼は身構えて、それを両腕で抱え込むように軽々と受け止める。
が、彗月は「ニヤリ」と不気味な笑みを溢し、唐突に右手で、
「パチン」
と、指を鳴らした。
すると、大柄の人物が受け止めたはずの水球が弾け飛び、それを見計らって彗月は今まで通りの手法で水玉を成形し、彼の呼吸妨害をする。
大柄の人物もその巨体を揺らしながら懸命にもがき、どうにかして水玉を剥がし取ろうとするが……成す術なく。
——そのまま力尽きて、他の者たちと同様に呆気なく堕ちてしまった……。
先方の気絶を確認した所で、彗月は水玉を解除し、
「……余裕」
と、黒装束の四人を軽々と倒し、少し余韻に浸る彗月がそう呟いた。
「お見事です……」
彗月の戦いぶりにリーダー格の人物は自分の事のように喜びながら大きな拍手をして褒め称える。
「……そろそろメインディッシュと行こうか」
休憩する事無く、続けざまにリーダー格の人物の事を鋭い眼差しで見据える彗月に「ニヤニヤ」と先方は笑みを溢しながら、
「君は大食漢だねぇ〜」
と、余裕なのか軽口を叩きながら徐に手足をブラブラと動かしてストレッチをし。
——臨戦態勢に入った……。