ダーク・ファンタジー小説
- 0 ( No.1 )
- 日時: 2012/06/11 22:12
- 名前: すずか (ID: GsncfwNf)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
報告をすると、あの人は突然私を抱きしめました。
「おめでとう!おめでとう!凄いな!よう頑張ったな!ほんまによう頑張ったな!!」
私が大好きな(あの人が使っているからこそですが)訛りの言葉で、あの人は労ってくれました。いつでも温かい人でした。抱きしめられると、心がぽわってなります。
「く、苦しい!」
「おお、堪忍な!いやー、偉いな!ほんまに偉いな!」
きらきらした笑顔を振りまくあの人は、笑顔なのに何故か泣いていました。
「何で泣いてるの?ひょ、ひょっとして哀しい?ど、ど、どうしよう、ごめんなさ」
「謝らんでええ!全然哀しくないで!これは嬉し泣きっていうんや!幸せすぎたり、嬉しすぎたりするとな、笑いながら泣いてしまう時があるんやで!」
ボロボロ涙を流しながら、それでも満面の笑みで、私の頭を撫でてくれます。慌てていた心もその手のおかげで落ち着きました。嘘はつかない人だったのです。
まだぎゅっとされたままでしたが、私はあの人の顔を見上げました。綺麗に笑って、綺麗に泣いてるあの人の、お日様みたいな金髪が視界の上半分を埋めてくれます。ほんとに綺麗です。
名前を呼ぶと、あの人は顔を覗きこんでくれました。
「んー?何や?」
「今ね、」
「おう」
「幸せ」
「……!そうか!俺もやで!もー、ほんま可愛いなー!」
「うぎゅ」
抱きしめる力が強くなって、思わず息が漏れました。それに気付いたあの人は、慌てて手を緩めます。ほんとのことを言うと、もうちょっとぎゅーっとして欲しかったのですが。
「じゃあお祝いやな!お金はあんまないけど、今日は奮発して美味しいもん食べよな!」
「うん!これからは私ががんがん稼ぐから心配しなくていい!」
「それは頼もしいわ!」
顔を見合わせて笑い合いました。もう一度、名前を呼びます。
「どした?」
「ありがとう!今からたくさん恩返しする!」
「おお!期待してるで!」
あの頃、私は確かに幸せだったのです。